6次産業化 潜在力を着実に伸ばそう


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 沖縄の農業も捨てたものではない。それどころか、亜熱帯の自然に育まれた独特の農水産物は、大きな潜在力を秘めていると言っても過言ではないだろう。

 第1次産業である農林水産業の従事者が、農産物などの生産だけでなく、食品への加工(第2次産業)や、流通・販売(第3次産業)までも手掛ける「6次産業化」の取り組みが県内でも着実に広がりを見せている。
 背景には、6次産業化法が2011年3月に施行されたことがある。同法に基づく認定件数(13年2月末現在)は全国で1298件だが、そのうち沖縄は42件を占める。沖縄の経済規模は全国の1%程度だが、件数比率は3・2%と全国でも上位に位置する。
 県内主要シンクタンクのエコノミストの多くが、発展可能性のある分野として、6次産業化を挙げていることからも、期待の大きさが分かろうものだ。
 今年の元日号から始まった本紙連載「つなげる産地力 6次産業化への挑戦」では、沖縄農業の未来を切り開こうと、果敢に挑む生産者の取り組みを紹介しているが、知恵と工夫を凝らした多彩なアプローチに驚かされる。
 モズク、紅イモ、シークヮーサー、ゲットウなどおなじみの特産物のほかにも、豊富な栄養素を持つ「モリンガ」、葉が染料などに用いられる「ヘナ」、ハーブフルーツの「ノニ」など、新たな地域ブランド候補もめじろ押しだ。
 共通しているのは、高付加価値化や収益力の向上に向け、試行錯誤を繰り返しながら日夜奮闘している点だろう。
 「もうかる農業」は、後継者不足の解消や雇用の確保など地域農業再生の鍵を握る。それだけでなく、生産者と消費者の距離を縮める6次産業化は、地域農業への関心と信頼性が増し、より安心・安全な農産物の生産につながる。
 もちろん課題も多い。農業白書が指摘するように、品質証明など商品の差別化やブランド化をはじめ、マーケティングなど経営ノウハウを持つ人材の確保、資金調達など、ヒト、モノ、カネの支援が不可欠だからだ。
 沖縄総合事務局は、事業者の課題に対応するサポートセンターをおきぎん経済研究所内に設置している。国、県、市町村の連携はもとより省庁間の縦割りをなくし、助言内容を不断に見直すことで万全の支援体制を構築してほしい。