キプロス支援合意 抜本的な再発防止策を


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 破綻の回避策をひとまず是としたい。金融危機に直面したキプロスと、欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)は、総額100億ユーロ(約1兆2200億円)のキプロス金融支援の条件について基本合意した。

 最大手キプロス銀行の10万ユーロ(約1220万円)以上の大口預金者に大幅負担を課してキプロスが自力で58億ユーロを調達、それを条件に欧州中央銀行(ECB)がキプロスの銀行への緊急融資を継続する。
 「禁じ手」を使って危機をしのいだ格好だが、一時しのぎで済まさず、根本的な対策を講ずる必要があろう。再発防止の抜本策をEUは早急にまとめるべきだ。
 ここまでこじれた背景には、過去の経緯と各国の利害が絡む。
 キプロスは近年、非居住者の資金を呼び込むオフショア金融センターとなり、法人税率を10%にするなどした。タックスヘイブン(租税回避地)として発展した結果、外国資金の流入で銀行は肥大化した。大半はオイルマネーで潤ったロシアからの資金とされる。
 国の経済規模に見合わぬ過大な資産を抱えたため、銀行は国内だけで運用できず、ギリシャなどに多額を投資したが、ギリシャ金融危機で一部債権が強制的に削減され、大きな損害を被った。キプロス政府が資本注入できないほどの規模で、危機が一気に高まった。
 キプロス政府はEUに支援を要請したが、もともと銀行の資産にはロシア人の資金洗浄や脱税の疑いがささやかれていた。それをEUの税金で保護するわけにいかないと、大口預金者に負担を求めることになったのが真相だ。
 EUとIMFは金融支援の条件としてキプロスの全ての銀行預金に最大9・9%を1回限りで課税する案を示し、キプロス政府との間でいったん合意したが、キプロス議会が否決していた。
 今回の合意では、キプロス銀行の大口預金者に大幅な負担を求める。負担内容は不明だが、最大40%削減する可能性があるという。
 ユーロを買い戻すなど市場は合意を好感し、ひとまず危機は収束した。だが銀行預金にまで手を付けるのは禁じ手だ。政府や銀行への信頼は失墜したはずで、各国の預金者が動揺してもおかしくない。
取り付け騒ぎといった危機再燃を防ぐため、欧州各国は共通の預金保険などの整備を急ぐべきだ。