米軍新訓練施設 基地の排他的管理権見直せ


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 歴代内閣が繰り返し主張する「沖縄の基地負担軽減」の実態がこれだ。

 在沖米海兵隊が米軍キャンプ・ハンセン内の宜野座村福山にある市街地型戦闘訓練施設(コンバットタウン)付近に新たに建設した同様の施設群の全容が、本紙記者の空撮で明らかになった。コンバットタウン近くに集落を形成するように、主に大型の建物が約10棟も連なる。基地機能の強化は明白だ。
 安倍晋三首相はこの現状をどう見ているだろうか。沖縄に理解を示し、本気で負担軽減を考えているなら、まずこの矛盾に対する見解を示してほしい。
 1989年のコンバットタウン建設の際、米軍側は「施設を拡張する計画はない」との確認書を地元の宜野座村に送付していた。にもかかわらず、村の反対を無視するかのように2008年に同施設が建設された。その後、米軍から施設の完成や使用開始などが伝えられた形跡もない。傍若無人とはまさにこのことだろう。
 米軍がこの施設を「装置」と呼び、新たな施設増ではないと主張しているのにもあきれる。大型の建物が並び、従来のコンバットタウンよりも建物の数が多いにもかかわらずである。写真を見てそれを「装置」と表現する者がいるだろうか。米軍が言葉を取り繕って己を正当化するのは常とう手段だが、あまりにも不誠実すぎないか。
 新たに完成した施設は、以前からあるコンバットタウンと違って、中東の街並みをイメージさせる。アフガニスタンやイラクでの米国の対テロ戦争を想定した訓練が実施されているようだ。そうした特殊な施設が沖縄になければならない必然性についても何ら示されていない。
 要するに基地の中での米軍の行動は、誰も止めることはできないということだ。こうした横暴がまかり通る元凶は、日米地位協定で認められた米軍による基地の「排他的管理権」にある。沖縄の真の負担軽減は、この地位協定の見直しが不可欠であることを、安倍首相は肝に銘じてほしい。
 沖縄の土地、海、空は米軍のものではない。「管理権」を盾にやりたい放題することは、日本をまともな主権国家として見なさないと言っているようなものだ。こうしたことで日米関係を傷付けることは愚かなことだ。