沖大被養護者支援 社会全体で支えよう


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 児童養護施設の入所者や里子ら社会的養護が必要な若年者を対象に、沖縄大学は推薦入試合格者の授業料を4年間全額免除する奨学生制度を来年4月から始める。県内大学では初で、全国的にも4年間の全額免除は珍しいという。これら若年者は経済的理由で進学を諦める事例が多く、沖縄大学の支援策を高く評価したい。

 県内の乳児院、児童養護施設、里親宅、ファミリーホームで暮らす社会的養護が必要な子どもは2010年度で544人いる。児童福祉法では18歳になると自立とみなされ、里親委託は解除され、入所者は施設を出なければならない。
 実の親の支援を受けられない子どもが大学進学を希望する場合、入学金、授業料など多額の費用を自身で確保する必要がある。さらに家賃や生活費も工面しなければならない。このため多くが進学を諦めざるを得ない現実がある。
 さらに進学できたとしても経済的な理由で中途退学する学生も多い。県児童養護施設協議会が2005年にまとめた九州・沖縄8県の児童養護施設から進学した当事者のうち46%が中途退学している。
 県内8人のうち卒業したのは3人だけで中途退学は5人と6割を超えている。しかも5人全員が「生活費・学費不足」を理由に挙げた。学費だけでなく生活費も確保しなければ大学に通えない状況は若年者にとってあまりに厳しい。教育の機会均等という観点からも是正しなければならない。
 こうした学生を支援しようという動きが県内で起きている。県内児童養護施設を卒業した学生を仕送りで支援する「にじのはしファンド」という団体が11年1月から活動を始めた。また寄付金を積み立てて在園生の自立を支援する会もできている。こうした民間の支援組織に加え、沖縄大学の取り組みがほかの大学や専門学校にも広がっていくことを期待したい。
 行政として新たな支援制度を設けることはできないだろうか。昨年10月の県里親会の要請に対し、与世田兼稔副知事は県として進学を支援する奨学金制度について「研究できないかと思う」と述べ、前向きな姿勢を見せた。ぜひ実現してほしい。
 家庭的に恵まれなかった境遇を乗り越えて進学に向かう若年者を挫折させるような社会は健全ではない。社会全体で支え合う仕組みをつくりたい。