大規模海底鉱床 「資源立県」も夢ではない


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 エネルギーなど産業資源に乏しい日本にあって、「海洋資源大国」への道を開く大きな一歩と言えるのではないか。

 独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)によると、沖縄本島の北西100キロに位置する「伊是名海穴」と呼ばれる深海底で、資源量500万トン以上の大規模な海底熱水鉱床が存在することが分かった。
 既に確認されていた海底面付近の鉱床の資源量は、約340万トン程度と算定された。銅、亜鉛、鉛、金、銀などを含む「黒鉱(くろこう)」で、これら金属の資源量は1969年に発見され、94年に閉山した秋田県の黒鉱「深沢鉱床」と同規模という。
 海底熱水鉱床は、自動車や携帯電話などハイテク素材に欠かせないレアメタル(希少金属)が注目されがちだが、ベースメタルと呼ばれる銅、亜鉛、鉛の産業需要は大きい。金、銀の貴金属価値は説明するまでもないだろう。
 今回、新たに発見された鉱床は、海底面から30メートルより深い地点に存在するが、より大規模な鉱床と想定されるという。JOGMECは「この規模の発見は世界初。同様の鉱床が複数発見されることで、開発可能性がさらに高まる」と新発見の意義を強調する。
 現時点では、開発技術やコスト面から世界的に開発事例のない未踏の分野だが、近未来の資源開発は、新たな成長戦略分野とも位置付けられよう。世界のエネルギー勢力地図を一変させている「シェール革命」が好例だろう。
 天然ガスの一種「シェールガス」や原油「シェールオイル」は硬い岩石層に含まれるため、従来採掘は困難とされていた。だが、技術革新で開発コストが下がり生産が急拡大。豊富な埋蔵量を誇る米エネルギー業界は活況に沸く。
 日本の海洋資源では、海底熱水鉱床のほか、天然ガスの原料となるメタンハイドレートが広範囲に存在することも確認されている。
 そうしてみると、日本の排他的経済水域(EEZ)は世界で6番目の広さを誇るだけに、海洋資源大国も決して夢物語ではない。
 沖縄は、周辺海底に資源が眠る「宝の海」の中心と言っても過言ではない。最先端の製錬施設や研究機関の誘致など地理的優位性をどう生かすか。県も近未来を見据え、「資源立県」に向けた産業発展戦略を積極的に描くべきだ。