中核市那覇誕生 市民本位のサービス実現を


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 那覇市が1日、県内初の中核市に移行した。全国42市目となる。保健所業務など2490項目にわたる事務権限が県から委譲され、県都・那覇の地方行政の権限が強化された。那覇市はさらに自立性の高い地方自治確立に努めるとともに、市民本位の行政サービスを積極的に進めてほしい。

 中核市は政令指定都市に次ぐ都市制度として1995年に創設され、民生行政、保健衛生、都市計画、環境保全行政、地方教育行政などに関する一部事務が都道府県から委譲される。
 那覇市が中核市を目指したのは制度が始まった翌年からだ。しかし、当時は要件に「人口30万人以上」「面積100平方キロメートル」とあり、人口要件は満たしたが、約40平方キロメートルしかない那覇市は近隣自治体と合併しない限り、対象外だった。
 2006年に面積要件が廃止されたのを機に、市は10年から移行に向けた作業を本格化させ3年かけて実現した。地方分権が進む中、市民と直結する地方自治体の強みを生かした多角的な施策の推進を市民も望んでいるだろう。
 委譲される業務全体の4割を占めるのが市独自の保健所設置だ。市は国の補助メニューを活用し、本年度から市民を対象にした簡易の検診と保健指導事業を始める。保健所が医師を雇用できる利点を活用し、10分程度の短時間で結果を通知し、保健指導する。若い世代の生活習慣病対策を強化する考えだ。こうした取り組みで沖縄の健康長寿を取り戻す先導役を務めてもらいたい。
 動物愛護の業務も移る。市は犬猫の一時抑留移設「動物サポートセンター」を整備し、できるだけもらい手を探し、殺処分される動物を減らす考えだ。殺処分ゼロを目指してほしい。
 市と県の2段階で実施された事務の一元化で処理の迅速化が実現できそうだ。例えば身体障害者手帳の発行はこれまで申請から交付まで2、3カ月かかってきた。市はこれを半分の1カ月から1カ月半までの短縮を目指す。年間1500件ほどの交付申請があるというから、障がい者にとっては朗報だ。
 こうした行政効率化を進めるためには、何といっても職員の能力向上が不可欠だ。翁長雄志市長が力説している「職員力」を高め、市民本位のきめ細かいサービスの実現を期待したい。