米有力者の提言 地殻変動を直視せよ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 軍事予算の大幅削減圧力にさらされている米オバマ政権のお膝元の議会と、太平洋をにらむ軍事拠点であるハワイ州知事から重要な発言が繰り出された。

 在沖米軍の大幅な削減による沖縄の負担軽減要求と、ハワイへの在沖海兵隊の受け入れ提案だ。表裏一体の動きに見える。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をごり押しする日本の安倍政権に対しても、間接的に方針転換を促す核心を突いた提言である。
 米国防予算の承認に影響力を持つカール・レビン米上院軍事委員長が、海外の米軍兵力を縮小する必要性に触れ、「とりわけ太平洋地域、特に沖縄」と述べ、沖縄を最優先にすべきだと強調した。
 レビン氏は、沖縄に何度も足を運び、辺野古移設は「実行不可能」と唱えてきた。米議会きっての“知沖派”である。今回の発言で注目されるのは、アジア・太平洋地域の軍事力増強に傾くオバマ政権に対し、「私はシフトしない。沖縄から兵力を削減し、本国へ戻すべきだ」と明言したことだ。
 オバマ政権2期目の軍事戦略の根幹に冷や水を浴びせている。
 一方、太平洋地域の米軍の戦略を熟知したハワイ州のアバクロンビー知事は、州有地に家族住宅2500戸を整備する計画を具体化し、ヘーゲル国防長官らに直接働き掛ける意向を示している。
 受け入れ予定地には陸軍と海兵隊が使う演習場があり、兵舎と飛行場がある。辺野古移設は行き詰まり、グアムへの海兵隊移転も費用がかさむので困難と指摘した上で、同知事は、行き場を失う在沖海兵隊の受け皿は環境が整ったハワイが担う-と主張している。
 米下院議員だったアバクロンビー氏は知事に転身する前、軍事委員会で空陸軍小委委員長などを担った。県内移設を拒む沖縄の強固な民意を念頭に置き、政治的に持続可能な案として打ち出した海兵隊誘致には説得力がある。
 米国内の知日派の識者の中で、在沖海兵隊の大幅削減を求め、普天間飛行場の県内移設を疑問視する見方は増幅するばかりだ。
 日米同盟強化を錦の御旗に見立て、対米追従姿勢をあらわにする安倍晋三首相は、実現性が乏しい日米合意にしがみつくのをやめるべきだ。米国の地殻変動を見据えないと、沖縄の基地問題の対処を見誤る致命的な失策に帰結する。