中国大使発言 関係改善の合図見逃すな


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 程永華駐日中国大使が琉球新報の単独インタビューに応じ、日中関係を「正常な軌道、本来の安定・発展した軌道に戻すべきだ」と訴えた。日本政府はこのメッセージを見逃してはならない。関係改善の意図を正面から受け止めたい。

 もとより沖縄の海が戦場になるのは断じて許されないことだ。緊張緩和は沖縄にとってこそ切実な課題である。主張の差異は差異として認識しつつ、関係自体は「本来」の友好的「軌道」に戻すべきだ。
 程大使は日本語でインタビューに応じた。大使の公的な対応としては異例だ。懸命に探す言葉の端々に、日中の関係改善と事態打開への意欲がにじんでいた。
 「(日中)両国は文化的・経済的連携を深めるべきだ」とも、「国と国の問題は話し合いで、平和的に解決すべきだ」とも述べた。「戦略的互恵関係」との単語も使い、「経済的に相互依存関係にある重要なパートナー」とも語った。使用可能なあらゆる表現を使い、懸命に関係改善のシグナルを送ったと見て間違いない。
 ただし、主張にはうなずけない点もある。程大使は尖閣について、明代の航海録に「釣魚島の先に海溝があり、そこを渡ると琉球の境に入る」という記述があるから、釣魚島までは台湾の付属の島々で、琉球とは違うと主張した。
 沖縄側の見解は異なる。その明代の航海でも、琉球王国側の遣いが水先案内を務めた。島の呼び名も琉球側が教えている。琉球側にとってこそ尖閣は生活圏なのだ。
 とはいえ国が違えば見解が異なるのはある意味で当然だ。一つの事柄で見解が異なるから、全ての交流が止まるのは互いにとって不幸である。そういう認識は程大使にも明らかにあった。その点は沖縄も日本も一致できよう。
 日中国交正常化時の資料を見ると、中国側が言う通り、尖閣については「棚上げ」という暗黙の合意があったと見るのが自然だ。そうした先人の知恵に学ぶのも一つの道だろう。
 国内には、中国が沖縄の離島に武力侵攻すると言いはやす向きもあるが、程大使はそんな見方を言下に否定した。同時に沖縄への親近感も口にした。
 だとすれば、沖縄が日中対話の場の設定もできるのではないか。独自の文化と歴史を生かし、東アジアの平和構築に貢献できるのではないか。そんな道も考えたい。