習・福田会談 関係改善の努力加速を


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 福田康夫元首相と中国の習近平国家主席が7日、中国海南省で会談した。尖閣諸島問題で日中関係が冷え込む中、会談を関係改善への動きとして歓迎したい。公明党代表との会談や経済界要人の訪中などとも合わせ、関係改善を望む中国のシグナルと受け止めたい。

 昨年9月の日本政府による尖閣国有化と中国の激しい反日デモ以降、日中関係は冷却化している。
 2000年代前半にも小泉純一郎首相の靖国参拝問題をめぐり日中関係が悪化した。当時は政治は冷え込んだが経済は緊密な関係を維持し「政冷経熱」と言われた。現在は貿易、民間交流全般で関係が悪化し「政冷経冷」の異常事態だ。
 日中両政府が尖閣諸島を自国の「固有の領土」と主張し、国内の領土ナショナリズムに押される形で尖閣海域で公船同士がにらみ合っているが、両国の政治・外交的エネルギーの照準をそろそろ、未来志向で共存共栄を探る生産的な方向に転換していくべきだ。
 歴史的文化的つながりが千年以上前にさかのぼる日中が、いがみ合うことは不幸なことだ。
 中国はまた、輸出入ともに最大の貿易相手国だ。昨年9月以降の日中の経済関係はだいぶ冷え込んでいるものの、11年の日中貿易総額は3449億5475万ドルで2年連続で過去最高を更新した。11年は総額に占める割合が輸出で19・7%、輸入は21・5%だった。
 中国の急速な軍拡や国内民主化の遅れ、人権状況などに懸念を指摘する向きも強い。中国は国際社会の厳しい視線、指摘と真摯(しんし)に向き合うべきだろう。
 一方で深い相互依存関係にある日中が尖閣問題で対立を続けることは、日中関係だけでなく、アジアひいては世界全体の平和と繁栄にとって明らかにマイナスだ。
 尖閣諸島を実効支配している日本側からわざわざ島々の現状を改変する必然性はあるまい。「領有権」をめぐる主張の対立は、1972年の日中国交正常化以来の先人の知恵にならって「棚上げ」するしかないのではないか。
 日中両国は尖閣国有化以降、低迷している貿易や民間レベルの交流をむしろ活性化し双方の領土ナショナリズムを沈静化すべきだ。
 尖閣問題の解決策は、国際法に基づき武力による威嚇や武力行使ではなく、外交による平和的解決しかないことも銘記すべきだ。