原発汚染水漏れ 国は再発防止に積極関与を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 東京電力福島第1原発の地下水貯水槽から放射性物質に汚染された水が漏れだした。9日までに漏えいやその疑いが確認された貯水槽は3槽に上る。3月にはネズミが原因による大規模な停電で使用済み核燃料プールの冷却が29時間も停止した。相次ぐ重大事態の発生で東京電力の事故対応能力に強い疑問を抱かざるを得ない。

 第1原発では原子炉建屋などの地下に1日約400トンの地下水が流れ込み、原子炉を冷やした後の水と混ざって大量の汚染水が発生している。放射性セシウムなどを除去した後、一部は冷却水として再利用するが、残りは敷地内で保管するしかない。このため貯水タンクを次々と林立する形で整備していたが、大型でも容量は約千トンだ。
 これに対して敷地地下に整備した貯水槽は約2千~約1万4千トンと容量が大きく、総容量は5万8千トンある。今後、この貯水槽で大量の汚染水を保管していく計画を立てていた。その矢先に今回の漏えいが起きた。漏えいによる環境汚染を深刻に受け止めるべきだ。汚染水保管計画の見直しが急務だ。
 一体なぜ漏えいが起きたのか。施行した業者は「東電から求められた仕様で整備した」と説明している。これに対し東電側は「防水シートのつなぎ目から漏れた可能性がある」として施工ミスの可能性を指摘。東電と業者は責任のなすり合いをしている場合ではない。
 複数の貯水槽が漏えいしていることから構造的な欠陥があると疑うべきだ。しかし原子力規制委員会の委員は「汚染水対策の自転車操業、綱渡り的な側面は、みんなが感じていると思う」と述べる。まるでひとごとだ。原子力利用の安全確保を監視する規制委の職責をどう考えているのだろうか。
 相次ぐトラブルをみると、原子力規制委員会の監視体制は機能していないと言わざるを得ない。原子力規制庁の発足後も貯水槽設置の議論はほとんどしていない。汚染水保存の貯水槽自体が原子力で通常扱う施設でないため、独自の審査基準もなく、東電任せの状態になっていた。
 停電による冷却停止も汚染水漏えいでも、規制当局は事後に東電側に再発防止策の徹底を指示するほかなかった。これでは何のために規制委があるというのか。
 国も責任を東電だけに押し込めるのではなく、積極的に再発防止に関与すべきだ。