ネット選挙解禁へ 公正な選挙の糧にしよう


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 インターネットを使った選挙運動を夏の参院選から解禁する公職選挙法改正案が衆院を通過し、参院での審議を経て今月中に成立することが確実となった。

 衆院は全会一致の可決であり、ネット選挙の解禁は時代の要請と言えよう。政治の閉塞(へいそく)感に変化をもたらす上で「必要な一歩」と肯定的に評価したい。
 情報の発信・入手の手段として、インターネットは国民生活に定着している。選挙でもそれが活用できるようになれば、若者を中心に選挙がより身近になり、投票率の向上にもつながることが期待できる。
 一方で、誹謗(ひぼう)中傷が横行することなどへの懸念や、情報伝達の仕組みが変わることに伴う課題なども指摘されている。有権者はこうした点も踏まえて、ネット選挙時代に対応する必要がある。
 これまで、公示・公示後のネットでの選挙運動は禁止されていたが、改正案は、単文投稿サイト「ツイッター」や交流サイト「フェイスブック」をはじめとしたウェブサイトについて、一般有権者を含めて全面解禁にした。
 電子メールについては、参院選は政党と候補者に限定した。ツイッターやフェイスブックより密室性が高く、誹謗中傷を増長させやすいという理由からだ。
 ただ、有権者の電子メールについても、参院選での状況を見て検討する方針であり、全面解禁の流れは変わりそうにない。
 初の試みで特に懸念されるのはネット上で候補者を装う「成り済まし」や誹謗中傷だ。成り済まし対策として罰金や公民権停止の罰則を設けた。誹謗中傷に対してはプロバイダー(接続業者)が発信者に連絡を取り、削除できるまでの期間を短縮するなどした。
 選挙資金の多寡によって発信力や成り済まし対策の即応性に格差が生じ、小政党や特定の候補者が不利益を被らない仕組みをどう担保するかも課題だ。
 ネット選挙解禁で、候補者や政党もこれまで以上に、有権者の厳しいチェックを受けることになる。政党や政治家はネット環境への対応力以上に資質や実行力を磨き、政策論争を充実させなければならない。
 有権者の責任も大きくなる。ネットでの必要とする選挙情報だけではなく、新聞やテレビ、ラジオなどの多様な情報にも接し、総合的な判断をすることが大切だ。