安倍・ケリー会談 北朝鮮は対話へ戻る時だ


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 安倍晋三首相とケリー米国務長官が会談し、弾道ミサイルを発射すると挑発を繰り返す北朝鮮に対し、日米が連携し自制を求めると確認した。外交的解決へ向け、日米のぎりぎりの努力を支持したい。

 弾道ミサイルや核開発をめぐる問題で、国際社会は一貫して北朝鮮に自制を促している。北朝鮮は挑発行為は何の利益もなく、国際孤立を深めるだけだと自覚すべきだ。平穏な国民生活と経済再建を望むなら国際社会と協調すべきだ。
 ケリー長官は就任後初のアジア歴訪で先週末から日本、中国、韓国を訪問し、各国首脳らと北朝鮮の核開発阻止で協調を確認した。日米韓の連携により北朝鮮の核保有を認めない方針も再確認した。
 留意すべきは、オバマ米政権が米韓軍事演習の縮小などで北朝鮮の挑発に対する圧力を弱め、朝鮮半島の緊張緩和を目指す方向へ軌道修正したことだ。北朝鮮もこの機会を逃さず、対話のテーブルに戻るべきだ。
 朝鮮半島の非核化を目指す6カ国協議は2008年末以来開かれていない。再開に向け日米韓と中国、ロシアは調整を本格化させたい。北朝鮮も核放棄を確約した同協議の共同声明を「死滅した」としてきたが、一方的主張を撤回し対話に応じる姿勢を示してほしい。
 一方、米軍普天間飛行場返還問題について、安倍・ケリー会談は県内移設を既定方針通り進めるとの確認にとどまった。移設反対の沖縄の民意は考慮せずといわんばかりの不誠実さで、極めて遺憾だ。
 首相は名護市辺野古への移設計画の着実な進展を強調し、「(辺野古沿岸部の)埋め立て申請が承認されるよう政治環境を含め努力していきたい」とも述べた。県民の思いと乖離(かいり)し甚だ疑問だ。両氏には強権的な政策遂行への痛みがみじんも感じられず、暗澹(あんたん)たる思いだ。
 仲井真弘多知事は「県外移設」の公約を堅持している。安倍政権には振興策を絡めて圧力を掛け、譲歩を迫る「アメとムチ」の姿勢が再びもたげている。なぜ17年間の普天間の迷走に学ばないのか。
 北朝鮮の問題は、あくまで外交的解決を目指すべきだ。北朝鮮を発火点とする戦争も、沖縄、日本を出撃拠点とする戦争も断じて反対だ。紛争を武力による威嚇や武力行使で解決することは国連憲章で禁じられている。国際法の精神をいま一度、思い起こしたい。