教育委員会改革 政治介入への道避けよ


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 政府の教育再生実行会議は自治体の首長が教育長を任命、罷免できるようにし、教育長に地方教育行政の権限と責任を集中して担わせることなどを柱にした教育委員会改革の提言をまとめた。首長の意向を反映しやすくするのが眼目だが、教育への政治介入に道を開いたともいえ、大きな疑問が残る。

 教育委員会制度は戦前の教育が国家主義に引きずられ、戦争への道を突き進む原動力の一つとなった反省から出発している。このため教育行政が政治に左右されないよう首長から独立させた経緯がある。今回の提言は、地方分権、民主化、安定性、中立性の確保という現行の教委制度を実質的に否定した。果たしてこれで改革と言えるのだろうか。
 現在の教委の在り方にも問題はあろう。例えば学校管理や生徒指導の権限があるにもかかわらず、非常勤が中心の委員が月1~2回会合を開く程度だ。実務を担っている事務局の追認機関にすぎず、大所高所の判断という利点の半面、問題対処で迅速な意思決定ができないとの批判があった。管内の教育問題に目を光らせ、主体的に動ける教委立て直しが課題であった。
 教委を活性化させるか、廃止するかの二つだが、今回の提言は後者を選んでいる。文部科学省は教委制度の意義について「政治的中立性の確保」「継続性、安定性の確保」「地域住民の意向の反映」を掲げている。今回の提言は従来の説明と齟齬(そご)があるのではないか。
 教育再生実行会議は今年1月、教育改革に強い意欲を示す安倍晋三首相の意向を受けて政府が設置した。参加する有識者は作家の曽野綾子さんや「新しい歴史教科書をつくる会」元会長の八木秀次高崎経済大教授ら保守色が強い。実際の教育現場を知る人が少ないなど人選の偏りも指摘されている。
 提言ではこのほか、自治体に法令違反があった場合、国が是正を指示できるよう国の権限を強化することも盛り込まれた。八重山地区の中学公民の教科書採択問題で国の指導に従わず、教委の教科書採択権を優先した竹富町教委が東京書籍版教科書を採用したことへの対抗策とも受け取れるが、こうした対応が地方分権時代の教育の在り方として適切なのか、議論の余地がある。
 提言を受け、具体的な制度づくりは中教審が担う。冷静な議論を重ね、教育への政治介入に道を開く改革は避けるべきだ。