普天間ヘリ墜落 危険と不安は増すばかり


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米軍普天間基地所属のCH53E大型ヘリコプターが16日、韓国北部の北朝鮮との軍事境界線に近い江原道鉄原郡の射撃訓練場で着陸に失敗し、炎上した。

 原形をとどめない残骸に消防隊員が消火液をかけている紙面の写真を見て、多くの県民が2004年に起きた米軍ヘリ沖国大墜落事故を想起したに違いない。
 CH53Eヘリは沖国大墜落事故を起こしたCH53Dヘリと同機種でもあり、1999年にも国頭村安波沖で墜落事故を起こしている。
 いつまた、普天間飛行場周辺や県内のどこかで事故を起こさないかという、県民の不安や恐怖は募るばかりだ。米軍はまずは、事故原因の究明とその説明責任をきちんと果たさなければならない。
 在沖米海兵隊報道部は、今回の事故を「クラッシュ(墜落)」ではなく「ハードランディング(硬着陸)」と説明しているという。
 乗組員21人は全員脱出し無事だったが、しかし、機体が真っ二つに割れた事故現場の状況を見れば、かなりの衝撃で地上に落ちたことは容易に推察できる。
 あえて「墜落」という表現は使わずに「着陸に失敗」などと言うことで、事故を過小に見せようという意図はないのか。そんな疑念も湧いてくる。
 事故原因のきちんとした説明がなければ、県民のこうした不安や不信感はさらに高まるということを米軍は肝に銘じるべきだ。
 事故機は米韓軍事演習「フォールイーグル」に参加し、訓練の運用支援を担っていた。県民の間からは「在沖米軍のヘリが緊張関係にある場所にわざわざ行って訓練していることは、沖縄が戦場に直結していることの表れだ」(ヘリ基地反対協の安次富浩共同代表)との声も上がっている。
 緊迫化する朝鮮半島情勢で、北朝鮮の労働新聞は「米軍の前哨基地」として三沢と横須賀、沖縄を挙げ「われわれの射撃圏にある」とする記事を掲載している。
 挑発的な言動は許せない。同時に、軍事基地があるが故の事故とともに標的にされる危険性もまた、再認識せざるを得ない。この危機感は「抑止力」以上に、県民には実感が強い。
 日米両政府は、今回の事故で県民が受けた衝撃を決して過小評価してはならない。それに応えるのは普天間の閉鎖や県外・国外移設、過重負担の解消以外にない。