台湾貨物航路 港湾物流拡大の呼び水に


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 経済成長著しいアジア市場を沖縄にまた一歩引き寄せる取り組みだと歓迎したい。

 琉球海運(那覇市)は、台湾最大の高雄港と沖縄を結ぶ定期貨物航路を来年5月に新設する。既存の博多-那覇-先島航路を延長し、新たな寄港地に鹿児島港も加えて九州からの集荷も強化する。アジア展開戦略の第1弾と位置付けており、将来的には香港や中国本土との直航便開設も視野に入れるという。
 国際物流の拠点(ハブ)化構想を掲げる県の21世紀ビジョンにも合致する取り組みであり、県内企業のビジネス拡大の機会創出はもとより、アジアとの経済交流が活性化する意義は大きい。
 アジアに近い沖縄の地理的優位性は、全日本空輸(ANA)が那覇空港を中継ハブとする国際航空貨物事業が実証済みと言っても過言ではないだろう。同空港の国際貨物取扱量はANA事業開始前の2008年は935トンだったが、10年には08年比158倍の14万8千トン余に急速に拡大している。
 一方、那覇港と那覇空港の国内輸送を含めた貨物取扱量を見ると、那覇港が97%を占め、県内物流の大部分を港湾に依拠している。ただ、同港の国際貨物取扱量は近年約100万トンで推移するなど長く低迷しているのが実態だ。
 県などは那覇空港と同様、那覇港を東アジアの中継ハブとする「国際トランシップ(積み替え)構想」を掲げるが、割高な積み降ろし料金のほか、ガントリークレーンなど港湾整備がアジア主要港に比べて立ち遅れていることなども低迷要因の一つとなっている。
 県はかねて国内輸送を自国船籍に限るカボタージュ規制がネックになっていると主張。国は沖縄特例で規制を10年に一部緩和し、日本の船舶運航事業者が運航する外国船籍に限って認めたが、貨物量不足で利用実績はいまだにない。
 「卵(貨物)が先か鶏(航路開設)が先か」の議論もあろうが、地道にそれぞれの取り組みを積み上げていくしか活路は開けまい。港湾物流の活性化は、航空輸送と運賃が安い海上輸送を組み合わせた「シー・アンド・エアー」への展開をはじめ、港湾施設整備の促進にもつながる。輸送コストの低減は、県外市場を目指す企業の競争力強化に不可欠だけになおさらだ。琉球海運の新航路開設が、港湾活性化の呼び水となることを期待したい。