PAC3配備 軍事拠点化は許されない


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 自治体に事前の説明もなく搬入した点に不信の念を抱かざるを得ない。航空自衛隊が沖縄の基地への地対空誘導弾パトリオット(PAC3)常設に踏み切ったが、県民を蚊帳の外に置き、秘密裏にことを運ぶさまはまるで米軍のようだった。

 そもそも配備は適切な判断と言えるのか。音速の数倍から10数倍というすさまじい速度で飛ぶミサイルに、同じく超音速のミサイルを3次元の1点で命中させる話だ。落下地点を完全に予測して真正面で待ち受けるのならまだしも、どこから発射し、どこを狙うのか分からないのが現実だ。それを離れた地点から、しかもわずか数分間の猶予で迎撃するのは、相当困難なはずだ。
 それなのに、PAC3配備には毎年度500億円から千数百億円もの予算を投じてきた。費用対効果が不明のままだ。日米の軍産複合体の利権の構造に組み込まれている構図が透けて見える。このままでよいのだろうか。
 今回、民間の定期船を使い、民間の港から輸送した点も解せない。「実質的な安保改定」と言われた1997年の日米防衛協力新指針(新ガイドライン)で、有事には米軍が日本中の民間港と民間空港を自由に使えることになった。だが国民の反発を恐れたのか、政府はそれを積極的に周知しなかったから、今も国民の多くが知らないままだ。だから米軍は指針が本当に機能するのか疑問を呈していた。今回の輸送が、その実証実験になったのは想像に難くない。
 米国は財政の窮迫で近い将来、外国に駐留する米軍を縮小せざるを得ない。防衛省は米軍が退去した後、自衛隊に肩代わりさせ、沖縄を軍事拠点として使い続けようと考えているのではないか。今回の配備はその地ならしではないか。
 当然、県民の反発が予想されるから、県民が気付く前に、既成事実を先行させて軍事拠点化を後戻りできないようにする。それも今回の配備の狙いではないか。そう考えれば今回、一切の説明抜きに不意打ちで配備したありさまとも符合する。
 配備を前倒ししたのも、ミサイル騒ぎで北朝鮮への反発が強い間に配備を終えておこうとしたのではないか。そうであれば姑息(こそく)な手法と言わざるを得ない。県民が知らないままで沖縄を軍事拠点化するのは許されない。防衛省は不意打ちでなく堂々と議論すべきだ。