衆院区割り法案 政争やめ抜本改革を急げ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 衆院政治倫理・公選法改正特別委員会は、衆院小選挙区定数「0増5減」に伴う区割り改定を盛り込んだ公選法改正案を与党の賛成多数で可決した。与党は23日の本会議で可決し、衆院を通過させる方針だ。

 野党は議員定数削減や選挙制度改革を区割り法案と切り離して先行的に処理する与党の対応を批判。野党多数の参院で審議のめどは立たず、衆院再可決が現実味を帯びてきた。
 自民党の高村正彦副総裁は19日の党役員連絡会で「どんな抵抗があっても通せる『抑止力』をしっかり持って対話することが大事だ」と述べたが、数の力を背景にした国会運営は厳に慎むべきだ。
 自民が0増5減の区割り改定を急ぐのは、2倍を超える「1票の格差」で実施された昨年12月の衆院選に対し、無効、違憲判決が相次いだからにほかならない。
 安倍晋三首相は「まずは1票の格差を是正すべきだ」と述べたが、区割り改定は弥縫(びほう)策にすぎず抜本解決には程遠い。3月7日の札幌高裁判決は0増5減などの是正策を不十分とし、抜本改正を求めていることからも明らかだ。
 新区割りによる1票の格差は最大1・998倍で合憲基準ぎりぎりだ。そもそも2010年の国勢調査に基づくため、「実質的には現時点で2倍を超えている」(民主)との指摘もある。自民は「違憲状態の早期解消が責務」と息巻くが、何ら説得力を持ち得ない。
 自民は区割り改定後に定数削減や選挙制度改革に取り組むとする。しかし、委員会可決をめぐる与野党協議では、民主、日本維新両党が選挙制度の抜本改革と定数削減について「今国会中に結論を得る」との明確な文言を求めたことから、決裂した。これでは自民は、抜本改革に後ろ向きと見なされても致し方ないだろう。
 二大政党化による政権交代を促すとされる小選挙区制度だが、死に票が増え、少数政党に不利との批判も絶えない。自民が大勝した昨年衆院選は、小選挙区での自民の得票率は43%だが、議席占有率は79%に上った。死に票は投票総数の56%に達した。
 1票の格差はもとより、多くの民意をより反映できるよう、得票率と議席獲得率との乖離(かいり)状態の是正もまた重要だ。選挙制度改革を党利党略や政争の具としてはならない。主権者である国民本位の議論を急ぐべきだ。