高江の森希少種 基地と自然は共存しない


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 破壊を宿命とする軍事活動と自然保護は、磁石の同じ極が反発し合うように永久に相いれない。

 地球儀を回すと、針の先ほどの面積しかない沖縄本島の約18・8%を米軍基地が占める。温暖な亜熱帯気候に育まれた生物多様性豊かな自然と基地のあつれきが続く中、やんばるの森で新種のランや世界規模のサンゴの群集が相次いで見つかっている。
 米海兵隊のMV22オスプレイが飛び交い、その離着陸帯の建設が強引に進められている東村高江の森で、台湾で新種と位置付けられたランや、複数の絶滅危惧種の植物が確認された事実は重い。
 非政府組織(NGO)の「山原の自然を歩む会」が見つけ出した。
 開発などから森を守る必要性を強調する専門家は、絶滅が危ぶまれる要因に(1)自生地の消滅(2)人間による採集(3)自然災害や病害虫の発生-を挙げ、個体数と自生地が限られる沖縄の生物のほとんどに当てはまると警鐘を鳴らしている。
 本島北部のやんばるには、世界屈指の亜熱帯林が広がる。絶滅危惧種のヤンバルクイナやノグチゲラの唯一の生息地である。
 絶滅危惧種を脅かす「開発」の最たるものは、高江住民や自然保護団体の強い反対を押し切って進められているオスプレイの離着陸帯の建設だろう。
 森林を切り開いて造る平らな着陸帯の直径は約75メートルに及ぶ。高江区に最も近い着陸帯一つが完成し、沖縄防衛局は残る5カ所の建設を進める構えを崩していない。
 沖縄防衛局は、着陸帯の建設予定地に生えている希少植物を別の場所に移植したが、生存率が低く、失敗した。台風が襲来する沖縄で、移植を「最善の保全措置」(同局)とするには無理がある。
 米軍普天間飛行場の返還合意から満17年を迎えたのを機に、本紙写真映像部が移設先の辺野古沖と大浦湾で、ハマサンゴの大群集などの豊かな生態系を撮影した。
 新基地が建設されれば埋め立てられるキャンプ・シュワブ沖で、特別天然記念物のジュゴンの餌となる海草が自生し、大浦湾では新たなサンゴの群集も確認された。やんばるの森の養分を川が運び込む豊饒(ほうじょう)な海が、危機に直面する不条理を鮮明に浮かび上らせた。
 自然は一度失うと取り返しがつかない。沖縄の貴重な自然と共存しない米軍基地が退くべきだ。