中国四川地震 二次被害を食い止めよ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 中国四川省で大きな地震が再び起きた。約7万人の犠牲者を出した2008年5月の四川大地震も記憶に新しいが、今回は同省の雅安市蘆山県で20日朝にマグニチュード(M)7・0の地震が発生。22日午後の時点で死者188人を数え、被災者は173万人を超えた。

 被災地は23日午前8時2分(日本時間9時2分)に、生存率が急激に下がると言われる被災後72時間を迎える。二次災害を防ぐべく一刻も早く被災者の救助を進め、被害を最小限に食い止めなければならない。
 中国政府は軍や武装警察、医療関係者ら約3万人を被災地に派遣し、生存者の捜索や被災者支援など懸命の活動を続けている。だが余震の多発に加え、土砂崩れなどによる道路の遮断や交通渋滞などで救助が遅れている地域もある。
 深刻な被害を受けた農村部への山道では救援活動に投入された軍や武装警察の車両通行が優先される一方、飲食料品など救援物資の配給が遅れているという指摘もあり、気掛かりだ。
 5年前の四川大地震では校舎の倒壊が相次ぎ、子どもたちの犠牲が相次いだ。中国政府はその後、学校や公共施設を中心に耐震性の強化を進めたが、貧しい農村部は耐震工事が十分進んでおらず、今回も大きな被害が出た。
 前回は日本などの非政府組織(NGO)が被災地に入り、支援活動に当たった。だが今回、中国当局は政府の各機関や民間団体、ボランティアらが許可なく被災地に入ることを禁止。「大量の人員が被災地に向かえば救助活動にも困難をもたらす」と説明している。
 善意の救援活動も、バラバラになればむしろ被災地を混乱させることは東日本大震災の経験からもよく理解できるところだ。中国政府は日本政府など海外からの支援の申し出にも謝意を表明しつつ、「現時点では国外からの支援を必要とする状況にない」として、現時点で各国の救援隊や物資は受け入れない方針を示しているが、体面を保つことにとらわれてはいまいか。
 3月に本格的に発足した習近平指導部にとって、今回の地震は鳥インフルエンザウイルス問題に続く大きな難局だ。李克強首相が被災地で陣頭指揮を執る姿が繰り返し報じられているが、国家の体裁や体制の引き締めより、今は一人でも多くの命を救うことを最優先に考えるべきなのは論をまたない。