不起訴不当議決 厳正捜査で起訴すべきだ


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 「身内の捜査」に基づいた刑事処分はどうみても甘く、おかしい。だが、罪を問うほどまでには見解が一致しなかったのだろう。

 小沢一郎元民主党代表が無罪となった陸山会事件で、取り調べた元秘書をめぐり、虚偽の供述調書を作成した東京地検の田代政弘元検事について、東京第1検察審査会が「不起訴不当」と議決した。
 検事が調書を捏造(ねつぞう)したことは疑いないにもかかわらず、「起訴相当」に至らなかった判断は理解し難い。
 元検事の強制起訴はなくなったが、審査会は捜査の在り方を厳しく批判した。検察当局は、険しい視線を向ける国民世論を反映した議決を重く受け止めねばならない。
 田代元検事は、小沢代表の元秘書の石川知裕衆院議員を取り調べ、「検事から『うそをつけば選挙民を裏切ることになる』と言われたのが、効いた」と述べたと供述調書に記したが、やりとりは全くなかった。証人出廷した元検事は「記憶が混同した」と釈明した。
 虚偽有印公文書作成・同行使などの容疑で告発された元検事は、嫌疑不十分で不起訴処分となり、国民の批判が強まっていた。
 議決は「故意を否定した検察の不起訴理由には納得がいかず、捜査が不十分か、不起訴にするための理由にしているとさえみられる」と最高検の捜査を非難した。
 「記憶混同」に関し、検察当局が「検事も人の子なので間違いもある」と説明したことも議決に記された。人の一生を左右する捜査機関の重責に背を向けた、あまりに軽い説明に驚きを覚える。検審が「ごまかしていると評さざるを得ない」と指弾したのは当然だ。
 虚偽を含む田代元検事の報告書の最大の問題は、別の検察審査会による小沢氏の強制起訴に決定的な影響を与えたことだ。小沢代表の起訴を誘導した疑いは拭えない。
 検察当局は厳正公正さを欠いた捜査を突かれ、「不起訴にするための理由にしている」「ごまかしている」とまで酷評された。異常事態である。
 検察審査会は市民11人の多数決で結論を下す。「起訴相当」には8人以上が必要で今回はその数には届かなかった。だが、「不起訴不当」は過半数の6人以上が起訴すべきだと主張したことを示す。
 最高検は厳正な再捜査を尽くし、国民の疑念を払拭(ふっしょく)する結論を出すべきだ。それは「起訴」しかあるまい。