ゾウムシ根絶宣言 県内全域拡大に力結集を


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 イモ類などに食害を与える特殊病害虫・アリモドキゾウムシの久米島地域での根絶が確認された。政府は久米島地域を発生地域から除く省令改正を実施し、正式な「根絶宣言」を発した。1994年から久米島で実施してきた根絶事業が19年の歳月を経て、一つの実を結んだ。長年にわたって根絶のために汗を流してきた多くの関係者の労苦をたたえたい。

 アリモドキゾウムシは1903年に県内で確認された外来種だ。イモゾウムシとともに紅イモなどを食べ、食べられたイモは悪臭を放ち、食用はおろか、加工品、家畜の餌としても使えなくなる。農家からすれば、手間暇かけて育てた作物を台無しにする天敵だ。
 二つのゾウムシは植物防疫法で特殊害虫に指定され、寄生するサツマイモ類などは県外出荷ができない。県内甘藷(かんしょ)生産の観点からすれば大きな障害で、放っておくわけにはいかなかった。
 このため県内全域での根絶の足掛かりとして、一定面積の久米島で二つのゾウムシの根絶事業を始めた。駆除方法はウリミバエ根絶で成果を上げた不妊虫放飼法を採用した。放射線で不妊化したゾウムシを大量に野外に放出し、野生種同士が交尾する機会を奪って最終的に根絶する仕組みだ。
 長年の地道な取り組みで今年1月、駆除確認調査3回目の結果、アリモドキゾウムシの根絶を実現した。調査の途中で、本島から持ち込まれたサツマイモが発生源の成虫が見つかり、調査が延長されたが、根絶達成は地元農家にとって大きな喜びだっただろう。
 約400年前に中国から沖縄に伝来した甘藷はその後、鹿児島に渡り、日本全国へと広まった。県農業試験場で交配、育成された品種「沖縄100号」は戦前、戦後の食糧難時代を支えた。イモと深い関わりのある沖縄が二つの特殊病害虫の存在によって高品質の甘藷を全国に発信供給できない現状を打破しないといけない。
 久米島は現在、紅イモのブランド産地化に向けた取り組みを進めている。残りのイモゾウムシの根絶が実現できれば、県外出荷が解禁となり、生産量は飛躍的に拡大する。経済的な波及効果は計り知れない。津堅島でも08年から根絶事業が始まっている。県内全域での両種絶滅に向けた関係機関のさらなる努力に期待し、多くの県民で支えたい。