就活解禁繰り下げ 何より人材育成に留意を


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 言うまでもなく学生の本分は学業に努め、教養を高めることだ。それを忘れてはならない。

 大学生の就職活動解禁時期が2016年卒から3カ月繰り下げられ、大学3年生の3月からとなった。近年の就活はあまりに早く始まるため、肝心の学業がおろそかになりがちとの批判が根強い。改革は学業への悪影響を少なくするのが狙いで、評価したい。
 大学生の就活は近年、長期化していた。大学3年の夏に始まり、2年近くに及ぶ例も少なくない。大学生活の半分を費やすことになる。その分、学業に励む期間は短くなるから、人材の質が企業の求める水準に到達しないとの指摘すらあった。
 長期化に比例して費用もかさむ。就職情報会社の調査によると、就活費用は九州・沖縄の学生で21万7千円余もかかる。関東の1・7倍だ。長期化の弊害は大きい。
 このため経団連は11年3月、「倫理憲章」を改定し、13年卒を対象に、会社説明会など広報の解禁時期を従来より2カ月遅らせ、大学3年の12月からとした。
 それでも批判は根強くあったから政府は今月、経団連などに解禁時期の3カ月繰り下げを要請し、経済界も受け入れた。広報の解禁を繰り下げるだけでなく、面接など企業の選考活動も4カ月遅らせ、4年生の8月からとする。大学側も「学生が授業に専念できる」と歓迎している。
 外国へ留学していた学生は外国の年度替わりの6月ごろに帰国するから、選考開始が8月になれば間に合う。近年、減る一方だった留学を後押しする効果もあろう。
 とはいえ、これで問題なしというわけではない。経団連の倫理憲章はあくまで紳士協定であり、拘束力はない。外資系や新興IT企業などが順守するとは限らない。
 人材獲得で遅れを取るのは企業にとって命取りだ。もともと就職協定は選考開始を4年生の8月からとしていたが、協定破りが横行し、1997年に廃止された経緯がある。今回も同じ轍(てつ)を踏まないよう何らかの拘束力を持つ方法も検討すべきだ。
 改革の目的は将来性豊かな人材の育成にある。経済界も大学もその点に留意してほしい。
 期間は後ろにずれたが、就活の成否は事前の準備の度合いに左右される。学生は豊かな職業人生を送れるよう、しっかり準備して取り組んでほしい。