靖国参拝 強烈な違和感覚える


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 与野党の国会議員168人が春季例大祭に合わせて靖国神社を集団参拝した。すでに、麻生太郎副総理兼財務相ら現職閣僚3人の参拝や、安倍晋三首相の供物「真榊(まさかき)」奉納で波紋が広がっていたが、参拝に強烈な違和感を覚える。

 大戦でアジア諸国の死者は2千万人を数え、日本人の犠牲者は310万人を数えた。沖縄は本土防衛の「捨て石」として、3カ月余で住民9万4千人を含む20万人が命を落とす凄惨な地上戦を強いられたが、靖国神社には東京裁判で処刑された東条英機元首相らA級戦犯が合祀(ごうし)されている。
 元首相は1941年に陸軍相として戦場での心構えを定めた「戦陣訓」を通達。この中にある「生きて虜囚(りょしゅう)の辱めを受けず」との文言が後に「集団自決」などの悲劇につながった。沖縄や国全体を破滅に導いた戦争指導者らがまつられている事実は極めて重大であり、昭和天皇も靖国のA級戦犯合祀に不快感を持っていたことが知られている。
 集団参拝では県選出の島尻安伊子内閣府政務官をはじめ安倍内閣の政務三役も多数が参加。靖国との関係を考えた時、県選出議員の参拝は極めて残念だが、閣僚らの靖国参拝は憲法が定める政教分離原則からも疑問視されていることもあらためて指摘しておきたい。
 参拝に中国と韓国は強く反発し、日韓外相会談や日中友好議員連盟の訪中が白紙となった。影響は拡大しており、事態が国益を大きく損ねていることは明らかだ。
 参拝した議員らは「どう慰霊するかは日本国内の問題。外交問題になる方がおかしい」(高市早苗自民党政調会長)と話しているが、靖国参拝が海外の目に「侵略戦争の美化」と映っている事実を真摯(し)に受け止めるべきだ。
 参拝議員数は過去最多となり、昨年の同時期から倍増。「保守化」を指摘する声があるが、議員らは一部の支持層向けの行動を最優先しているように見える。国民の多くは、喧噪(けんそう)中ではなく、静かな環境で心安らかに戦没者を追悼したいと願っているはずだ。
 中韓両国の反発に安倍晋三首相は「わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない」と強く反論したが、これでは批判の応酬を招くだけではないか。一体どう近隣外交のかじを取るつもりなのか。強い危機感を抱かざるを得ない。