台湾で鳥インフル 警戒怠らず粛々と備えを


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 中国本土以外では初めてとなる鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)感染者が台湾で確認された。中台間を頻繁に行き来していた53歳の男性ビジネスマンで、中国で感染した疑いが濃厚という。

 大陸との人的交流が急拡大している台湾当局は空港などでの検査を強化していただけに、水際対策の難しさがあらためて浮き彫りになったと言える。
 世界保健機関(WHO)と関係当局は発生源や感染経路の解明を急ぎ、これ以上、他の地域に拡大することがないようウイルス封じ込めに総力を挙げてほしい。
 沖縄は中国や台湾と地理的に近く、近年、両地域との航空路線開設も相次いでいる。人やモノの交流が活発になりつつあるだけに対岸の火事ではない。
 県は今月上旬、危機管理対策本部会議を開き、情報収集を徹底するとともに、予防措置や初動の防疫対策を強化することを確認している。県の取り組みを逐次公開し、積極的に内外に情報発信していくことも、風評被害を未然に防ぐ手だてになると心得たい。
 WHOと中国当局の合同調査チームによると、H7N9型は、世界的大流行(パンデミック)を引き起こす人から人への感染は確認されていない。2009年に大流行したH1N1型は、最初の感染者がメキシコで報告されてから2週間余で29カ国の約4400人に拡大したが、H7N9型は1カ月弱で100人と、今のところ感染拡大のペースは比較的に鈍い。
 ネット上では感染に関するデマも流れているとされるが、過度に恐れや不安を抱くことは禁物だ。もとより、国内外の関係機関は警戒を怠ることなく連携を強め、情報公開の透明性確保や、半年を要するとされるワクチン開発など万全の体制を整えてもらいたい。
 厚生労働省はH7N9型の国内侵入に備え、同型を感染症法に基づく「指定感染症」とし、強制入院や就業制限などができる対策を決めた。五つに分類される危険性は下から2番目の「4類感染症」の位置付けだが、東南アジアを中心に広がり、致死率が5割を超えるH5N1型が含まれる「2類」と同様の対策を期間限定で取ることができる。
 パンデミックの危険性をはらむ鳥インフル対策は、先手、先手の対策が何よりも重要だ。恐れず侮らず、事前に考え得る対策を粛々と講じてもらいたい。