日ロ共同声明 局面打開へ骨太戦略を


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 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領がモスクワで会談し、懸案の北方領土問題をめぐり「双方に受け入れ可能な解決策」作成へ交渉を加速させることを柱とした共同声明を発表した。

 両国首脳による共同声明は2003年の小泉純一郎首相とプーチン氏以来10年ぶりだ。これを機に停滞していた日ロ関係が改善し、北方領土問題が前進することを期待したい。
 ただ、北方領土問題をめぐる両国の考えには隔たりがあり、仮に経済協力が進んだとしてもすぐに領土問題が進展する保証はない。日本政府は元島民らの意向も十分に踏まえ、粘り強い交渉で局面を打開していくしかない。
 両首脳は会談で、大戦後67年を経て日ロ平和条約が締結されていない状態は異常であるとの認識で一致。平和条約締結に決意を示し、外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)の開催やエネルギー・経済分野での協力強化も表明した。
 日本政府は経済分野での協力強化をてこに、領土問題解決につなげたい考えだ。これは一様ではないが、尖閣諸島や竹島の領有権問題にも通じる重要な課題だ。
 政府は、北方領土問題の解決が東アジアの平和と安定にもつながるという大局的な戦略も示して、ロシアとの交渉に臨むべきだ。
 北方4島は大戦を経て1945年8~9月に旧ソ連に占領され、その後はロシアの実効支配が続いている。52年発効のサンフランシスコ講和条約で放棄した千島列島に、北方4島は含まれていないというのが日本政府の主張だ。
 「屈辱の日」の4月28日に開催された政府主催の「主権回復」式典に対して、北方領土の元住民からは「故郷を失ったまま、『主権回復』と言われても納得できない。沖縄の人々が怒る気持ちも分かる」との声も上がった。
 同感だ。県民としても元島民らと思いを共有し、お互いに本当の意味で主権回復が果たせるよう取り組みたい。
 北方領土問題は沖縄が抱える問題と決して無縁ではない。基地問題が進展し、主権が回復したと県民が実感できる状況をつくることは、北方領土をめぐるロシアとの交渉でもプラスに働くはずだ。
 沖縄の基地問題で対米追従の姿勢のままでは、北方領土問題におけるロシアの厳しい姿勢も変わらないのではないか。日本政府の骨太な外交戦略が問われている。