こどもの日 よりよい未来用意しよう


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 子どもを取り巻く環境がなかなか改善しない。

 昨年1年間に警察が、虐待があったとして児童相談所への通告対象にした18歳未満の児童数は前年比42・1%増の1万6387人となり、統計を取り始めた2004年以降で最多だった。04年に比べて約17倍に増えた。
 県内の通告対象人数は87人で前年に比べ3人減った。ネグレクト、身体的虐待、心理的虐待の順に多く、性的虐待の通告対象者はいなかった。
 子どもは人として尊ばれ、社会の一員として重んじられ、よい環境の中で育てられる。1951年5月5日に制定された「児童憲章」の精神だ。全ての子に、よりよい未来を用意する責任が、私たち大人にある。
 本紙生活面連載の6こま漫画を1冊にまとめた「天才児ひなとかのんのおひさま日記」の続編が出版された。発達障がいの双子の日常生活を、母親の目線でいきいきと描いている。
 ほかの子とちょっと違う発想と行動をとるひなとかのん。学校や社会で自分の意見を否定されたり修正されることは、だれにでもあるだろう。でも家に帰れば「自分のことを認める家族がいて、ちゃんと居場所があることを知っている子どもでいてほしい」「『あなたは素晴らしい』と意識的に伝えてあげたい」と森山さんは書く。
 「子どもにとっては親はこの世の全てで、いつでも避難できる安全な場所です。親はその安全を保障してあげないといけません」
 森山さんの指摘の通りだ。子育てはやり直しがきかない。全ての子が幸せに暮らせるように、家庭だけでなく学校、地域が連携を密にして、子ども一人一人の才能を引き出す環境を整えたい。
 保育所に入れない待機児童の解消や育児支援、少子化対策など政治、行政が優先して取り組むべき課題は多い。
 新しい子育て支援制度の具体像を決める国の「子ども・子育て会議」が始まった。保育所や幼稚園、地域の子育て拠点などを充実させるための理念や指針をまとめる。利用者の意見を反映させるよう知恵を絞ってほしい。
 厚生労働省は認可保育所への株式会社の参入を加速する方針だ。数を増やそうとしているのだろうが、同時に保育の質も保証するような施策でなければならない。