日台操業ルール 沖縄漁民の声を反映せよ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 日本と台湾は、4月に調印した日台漁業協定に基づき、具体的な操業ルールを議論する「日台漁業委員会」の初会合を7日に台北市で開く。県水産課職員も会合に出席するほか、沖縄の漁業団体代表らが意見表明する予定だ。日台の交渉担当者は沖縄の声をしっかりと受け止め、余すことなく操業ルールに反映させてもらいたい。

 沖縄の漁業者らは、日本の排他的経済水域(EEZ)の一部で台湾漁船による操業を認めた協定について「台湾に大幅に譲渡し良い漁場を取られた」と猛反発し、漁獲高減少やトラブル増を強く懸念している。
 本来ならば、地元の頭越しに結ばれた協定の撤回や見直しが筋だが、日本政府は「すぐの撤回は難しい」(本川一善水産庁長官)との姿勢を崩していない。5日、県庁に高良倉吉副知事を訪ねた江藤拓農林水産副大臣は「協定の撤廃は厳しい」と重ねて強調した。
 安倍晋三首相は国会答弁で、日台漁業協定調印について「日本と台湾の関係のとげとなっていた。アジアの安全保障環境の大きな前進になる」との認識を示した。
 1996年から始まった日台漁業協議は十数年以上、遅々として進まなかったが、昨年後半から急進展した。尖閣諸島問題で中国と台湾の連携を阻止するため、日本が台湾に譲歩したのは自明だ。
 安全保障の名の下、沖縄の漁民の不利益を一顧だにせず、また沖縄を“政治的質草”にした。これで本当に主権国家と言えるのか。
 首相はじめ政府関係者は、操業ルールを定める初会合に当たり、沖縄を捨て石にしているとの批判を深く胸に刻むべきだ。そうすれば、少なくとも台湾との交渉でどのような対応を取るべきか、おのずから見えてくるはずだ。
 7日の初会合では、漁獲高や漁船数などの操業ルールを定める見通しだ。協定は10日の発効を予定することから、7日中にも大筋合意を目指すとされている。
 本川長官は、日台双方の操業を認めた法令適用除外水域をはみ出して台湾漁船が操業した場合、10日以降は原則拿捕(だほ)する方針を明らかにした。操業ルールは、こうした日本側の取り締まり対応も明文化すべきだ。
 もとより操業ルールをあいまいにしたまま、見切り発車で協定が発効することはあってはならない。沖縄の漁業者の権益確保と不安解消を前提条件とすべきだ。