育児休業3年 実態に即した支援策を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 安倍晋三首相が提唱した「育児休業3年」が論議を呼んでいる。「女性の活躍は成長戦略の中核をなす」として、経済界に自主的に導入するよう要請した。選択肢が広がるとの評価がある一方、実態に即していないとの批判も強い。

 公務員のほかに民間でも、既に3年育休を導入している企業はある。しかし、取得する人が少ないため、取りやめた企業も少なくないという。
 3年も休むと、職場環境も変わり、職場復帰の不安も膨らむ。育休延長よりも、職場復帰前後の短時間勤務制度などの支援策の充実を求める声が強いのが実情だ。
 経済的な事情も大きい。現在法定の育休給付金は休業前賃金の5割で、原則子どもが1歳になるまでだ。保育所に入れられないなどの事情があっても1歳半までだ。
 政府は3年育休を保障した企業への助成金も検討する方針だが、本気で導入を図るのなら企業任せにするのではなく、さらに踏み込んだ法整備が必要だろう。
 もっとも、それより先にやるべきことはある。3年延長以前に、中小企業を中心に育休そのものを取得できない人も多い。
 厚生労働省の2010年の調査では、出産を機に仕事を辞めた女性は54・1%。01年に比べると13・3ポイント減少したが、依然として過半数が出産を機に退職している。
 退職理由で育児と仕事の両立が難しいとした人は35%いた。育児に専念するとした女性も40%と多いが、これも将来の仕事復帰まで否定したものではない。
 希望する人が確実に育休を取れ仕事復帰も可能にする。それが先決だろう。特に、非正規雇用者は厳しい環境に置かれているのだ。 さらに、育休3年は育児の女性任せを助長し、男性の参加をさらに鈍らせるとの指摘も強い。
 厚労省の11年度調査では、男性の育休取得率は2・63%にとどまる。在宅勤務で所得保障するなど、男性の育休取得を促す環境整備がより重要だ。
 育休3年は待機児童解消と表裏一体だ。政府は5年間で40万人分の保育の受け皿を整備し待機児童をゼロにする方針だが、保育の質を落とさないためにも無認可園認可化や保育職員の低賃金などの課題にも取り組む必要がある。
 育休3年は、女性に過剰に負担を強いる「3歳児神話」に基づくものであってはならない。子育ては社会全体で、が基本だ。