もんじゅ停止命令へ 廃炉を政治決断する時だ


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 原子力規制委員会が日本原子力研究開発機構(原子力機構)の高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の点検漏れに関して、原子炉等規制法に基づき事実上の使用停止を命じる方向となった。安全管理体制に重大な不備が発覚したためで当然の措置だ。

 今後、点検方法などを定めた保安規定の変更や点検計画の見直しを求める。原子力機構の管理体制の改善が確認されるまで、核燃料の交換や制御棒の動作などの重要な作業は認められない見通しだ。
 もんじゅは、原発の使用済み燃料から再処理で取り出したプルトニウムを燃料に使う国の核燃料サイクル政策の要。1994年に初臨界に達したが、95年にナトリウム漏れ事故が起き14年以上運転を停止。2010年5月に運転を再開したが、同8月に燃料交換装置の落下事故があり再び停止した。
 昨年11月には原子力機構が1万点近くの機器の点検漏れを規制委に報告し、その後も規制委の立ち入り検査で新たな点検漏れが発覚した。説明が猫の目のように変わる同機構は信用できない。規制委は今後もんじゅに関する具体的な指示や命令の内容を詰めるというが、こうした対応は手ぬるい。
 安倍晋三首相や規制委が、場当たり的対応を続けるのは疑問だ。民主党政権は「2030年代の原発ゼロ」目標を掲げるとともに、昨年9月にまとめた新エネルギー・環境戦略の素案段階で、もんじゅの「廃止」を打ち出していた。
 しかし、昨年末に政権に返り咲いた自民党政権は、エネルギー政策の重点を安定供給とコスト低減に置き「原発を活用する」路線へ転換した。原発政策を所管する茂木敏充経済産業相は、核燃料サイクル政策について「完全に放棄する選択肢はない」というが、むしろ継続する選択肢があり得るのか。
 福島第1原発事故を本当に教訓とするつもりがあるのなら、安倍政権は「脱原発」を願う広範な世論とより真剣に向き合うべきだ。
 もんじゅは、敷地内の断層(破砕帯)のほか、高速増殖炉実用化の技術的見直しや既に1兆円に及んでいる開発費など多くの問題を抱えている。実用化計画は成果もなく、血税を食いつぶしている。
 もはや廃炉は不可避と考えるのが自然だろう。首相は廃炉を決断する時だ。国は、地元も納得する「出口戦略」の構築を急ぐべきだ。