成長戦略第2弾 実体経済の好転実感させよ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 円安株高という先行する市場の期待を、本格的な景気回復につなげられるのか。道筋はいまだ見えないと指摘せざるを得ない。

 安倍晋三首相は、農林水産業の強化や民間投資の大幅拡大などを柱とする成長戦略第2弾を発表した。今後3年間を企業に設備投資を促す「集中投資促進期間」と位置付け、民間の設備投資額を現在の年間63兆円から70兆円規模に増やすほか、生産から加工、販売までを手掛ける「6次産業化」を推進し、農家の所得を10年間で倍増させるなどの目標を掲げた。
 そのほか農業関連では、従来の「戸別所得補償制度」を見直し、コメや麦など一部の生産農家に限られている交付金の対象を広げる「直接支払い制度」を創設するとした。だが、手厚い支援策の財源の裏付けは乏しく、法人税軽減など大胆な改革案は先送りされた。企業による農地所有を完全に自由化する規制改革も見送られた。
 環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加に農業団体などの反発は強く、7月の参院選をにらみ、支持基盤を固めたいとの思惑も透けて見える。だからといって、従来のばらまき政策に先祖返りすることはあってはならない。
 そもそも安倍首相は、TPP参加で日本農業がどのような影響を受けるのか、まずは明確にすることが先決だろう。農家の所得倍増の聞こえは良いが、痛みを隠したままの農業強化策では、それこそ絵に描いた餅になりかねない。
 首相の経済政策「アベノミクス」は金融緩和、財政出動、成長戦略が三本の矢だ。とりわけ実体経済の好転に向け、成長戦略が鍵を握ることは論をまたない。
 金融緩和と財政出動という第一、第二の矢で、日経平均株価は5年4カ月ぶりに1万5千円の大台を回復し、円相場も1ドル=102円台まで下落。半面、長期金利の急騰や円安による輸入原料の値上がりという“副作用”を招いていることにも留意が必要だ。
 首相は4月に医療や子育てを柱とする成長戦略の第1弾を発表。6月5日に特区や民間資金を活用した社会資本整備(PFI)推進を盛り込んだ第3弾を公表し、6月中旬にも最終案を取りまとめる方針だ。
 成長戦略が骨抜きになれば、市場の期待は失望に変わる。雇用の増大や賃金の上昇など実体経済の好転を実感させてもらいたい。