沖縄に居座る米海兵隊の大部分を米本土に引き揚げる。残す部隊も1年のうち半分は沖縄を空ける活動をしているが、米国が必要とする軍事機能には支障が出ない。
突き詰めて言えば、こういうことだろう。
米軍事戦略に影響力を持つシンクタンク・ランド研究所が、第31海兵遠征部隊(31MEU、約2千人)以外の在沖海兵隊を米本国に移しても、「展開能力にはわずかな影響しか及ぼさない」と評価した。
海外の米軍基地に関する報告書の中で言及した。根拠不明確な「抑止力」を支える存在として在沖海兵隊を位置付ける日米政府の主張を否定し、沖縄に基地を押し付ける論理である「地政学的優位性」にも冷や水を浴びせている。
米国内の安全保障専門家の間から、沖縄の過重な負担の軽減と、米国の厳しい財政事情を基に、海兵隊の豪州移転論や米本国への撤収論が繰り出されるようになった。もはや、この流れをとどめることはできないだろう。
ランド研究所の研究員2人も2011年秋、「海兵隊を沖縄から移しても、ほとんどの緊急事態における作戦遂行上、大きな支障はない」と提言していた。
財政難に直撃されているオバマ米政権は10年間で計5千億ドル(約51兆円)の軍事予算削減を図っている。今回の提言も「費用削減型配置」の中で打ち出された。
沖縄の第3海兵遠征軍の司令部や、グアムやハワイに移す予定の主力歩兵部隊なども一緒に米本土に移す大胆さに特徴がある。
報告書は「米軍の存在に対する県民の反対を和らげ、費用も削減できる」としているが、妥当な見解である。
31MEUは、作戦遂行の即応性を特徴とするが、紛争や大規模な自然災害発生時に在留米人救出や人道支援の役割を重視している。
1年のうち半分は、普天間飛行場のヘリ部隊の一部を伴ってアジア・太平洋地域を巡回しているが、沖縄周辺の安全保障上、空白が生じたことはない。
報告書は普天間飛行場の県内移設に言及していないが、沖縄に31MEUを残すだけで米国の軍事合理性を満たすなら、名護市辺野古への代替基地建設も必要もない。
在沖海兵隊をめぐる米国発の提言が相次ぐ変化の波を真摯(しんし)に受け止め、日本政府の側から在沖海兵隊の大幅削減を求めるべきだ。