自民県連「県外」堅持 惰性の日米合意断ち切れ


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 自民党県連が7月に予定される参院選で、米軍普天間飛行場の「県外移設」を、党本部の了解が得られなくても独自の地域版公約に明記する考えを示した。「県外を取ってしまうと、公約自体が死ぬ」(翁長政俊県連会長)というその意気や良しだが、本当の勝負はこれからだ。県民はその本気度を注視している。

 自民党本部はこれまで名護市辺野古への移設を推進するとした日米両政府の合意に従うよう、県連への説得を重ねてきた。党本部は今月末に参院選公約を取りまとめる方針だが、普天間問題については、辺野古移設推進との安倍政権の方針は盛り込まないという。党本部と地方組織との公約の矛盾は好ましくないが、県外を主張する沖縄県連の説得はなかなか難しい。ならばあえて「辺野古」と明記して対立を顕在化させるまでもない-といった判断だろうか。だが政権が辺野古移設の考えを変えたわけではない。昨年の衆院選同様、党の政策集には書かないというだけだ。
 「妥協案」を提示された県連が、「県民には通用しない」と拒んだことは当然であり、評価できる。一方で県連に対し厳しい目が注がれていることも忘れてはならない。
 昨年衆院選では県内4小選挙区の自民党候補はいずれも県外移設を主張し、比例復活を含めて全員当選した。だが、そのうちの西銘恒三郎氏は県外移設の公約を撤回し、辺野古移設の容認に転じると表明した。2010年参院選で県外移設と県内移設反対を唱えて再選された島尻安伊子氏も、同様に県外移設の公約を翻した。
 有権者との約束を反故(ほご)にする両議員に対する鋭い批判が出ているが、組織方針と異なる主張を公然と唱える所属議員に対し、県連は現在まで処分はおろか、実質的に何らけじめをつけていない。曖昧な対応のままでは県外移設の公約も、参院選向けのポーズと受け取られかねないと心すべきだ。
 軍事・国際戦略の進展や厳しい財政事情も背景に、米国内では在沖海兵隊の削減・撤退論が上下院やシンクタンクなどで繰り返されている。日本政府はこうした安全保障環境の変化を読み取り、沖縄に基地を押し付ける惰性の歴史を断ち切るべきだ。自民党県連こそ政権を担う党中央にそれを直言できる立場にある。ひるまず堂々と、正論を押し出していくべきだ。