待機児童ゼロ 迅速な改善に学び解消図れ


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 子どもを保育所に預けたくても受け入れてもらえない。待機児童問題が全国的課題となっている中、ことし4月の解消を目指してきた横浜市の林文子市長が、認可保育所の待機児童がゼロになったと発表した。2010年には全国最多の1552人だっただけに、迅速かつ劇的な改善にこぎ着けたことをまず評価したい。

 林市長は「2010年から3年間でゼロにする」として最優先課題に挙げ、認可保育所の増設やきめ細かな情報提供に取り組んだ。トップが示した目標の重要性を職員全体で共有した成果と言えよう。
 横浜市は2010年以降、株式会社の新規参入を奨励し、公募した保育運営事業者に民間の土地所有者をマッチングして、認可保育所を建てる手法を導入した。3年間で認可保育所を144カ所整え、定員を1万人以上増やした。
 認可保育所の増だけでなく、保護者のニーズや通勤の状況に応じ、幼稚園の預かり保育などの情報をきめ細かく提供する「保育コンシェルジェ」を配置した。家計を助けるため、パートなどで働く母親は増えている。コンシェルジェを利用した市民からは、使いやすい保育サービスの提案が好評という。
 一方で、地域によっては定員割れや保育士不足など、保育の質に直結する課題も浮かび上がっており、横浜市は改善を続ける方針だ。
 待機児童問題は深刻化している。東京都足立区や杉並区などでは、認可保育所を利用できない母親らが行政不服審査法に基づく異議申し立ての行動に出ており、全国に広がりつつある。
 沖縄県内の12年10月現在の待機児童数は3326人となっており、待機児童の割合は全国ワーストの不名誉な状況が続く。同年4月の待機児童数では、県都・那覇市が436人で10位となっている。
 厚生労働省は、本年度から5年間で40万人分の保育の受け皿拡充を目指す待機児童解消加速化プランを打ち出している。安倍政権は民間企業を活用する横浜市をモデルに取り組みを加速させる方針だが、民間活力にどこまで委ねるかなど、横浜で照らし出された課題への対処にも慎重を期すべきだ。
 適正な保育料と質の両立を大前提としつつ、国と自治体が連携して地域の実情に応じた創意工夫を凝らし、実効性の高い待機児童解消システムを構築してほしい。