県内体罰163件 根絶具体策に生かそう


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 2012年度に県内の公立・私立の小中高校で起きた体罰は163件あったと県教育庁が発表した。調査は教職員、児童生徒、保護者にアンケートを実施して把握した。昨年4月からことし1月までに、同庁と市町村教育委員会が把握して国に報告した公立学校の体罰は37件で、今回の調査と大きな開きがある。埋もれていた体罰を明るみにしたという意味で、今回の調査は意義深い。

 国への報告数が今回の調査数の4分の1以下にとどまっている現状は、校内だけの指導にとどまっていたか、事実そのものを学校が把握できていないことを意味する。体罰防止のための情報共有が不十分であると言わざるを得ない。
 体罰は児童生徒に殴る蹴るの暴行を加えたり、長時間の正座をさせたりして肉体的苦痛を与える行為で、学校教育法第11条で明確に禁止されている違法行為だ。体罰は明らかに人権侵害行為だ。教員が学校現場で子どもの人権を侵害するような行為に及ぶことは断じてあってはならない。
 こうしたことを踏まえ、県教育庁は2000年に教師の体罰に対する懲戒処分の判断基準を明文化した。体罰などで児童が重傷を負った場合は「免職または停職」、軽傷の場合は「停職または減給」、そのいずれにも該当しない場合は「戒告」と定めている。01~05年の5年間で体罰で処分された教師は諭旨免職1件を含む28件だ。
 今回の調査を踏まえ、体罰根絶に向けた具体的な対策を進める必要がある。専門家が指摘しているように、実際の体罰がどのような状況の中で起きたのかを記録し、教員間で共有すべきだろう。そのことで、同じ場面に遭遇した時に体罰を回避して問題解決の道を探ることができるはずだ。
 今回の調査は文部科学省の依頼に基づいて実施されている。今後、継続実施する予定はないようだが、できれば毎年実施し、情報を蓄積していくべきではないか。教員だけでなく、保護者とも共有し、体罰は許されないとの監視の目を学校の外からも注ぐ必要がある。
 「昔から言い聞かせるという言葉はあるけれど、殴り聞かせるという言葉はない」。興南高校野球部を甲子園春夏連覇に導いた我喜屋優監督の言葉だ。今回の調査を踏まえ、学校現場は体罰という暴力に頼らず、子どもと真剣に向き合う指導をさらに広げてほしい。