台湾漁船拿捕 実効性あるルール確立を


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 実効性と信頼性が、早くも大きく揺らいでいる。

 日台漁業協定で定めた合意水域ではない、日本の排他的経済水域で操業していた台湾・高雄港所属のはえ縄漁船を水産庁が拿捕(だほ)し、船長を漁業主権法違反(無許可操業)の疑いで逮捕した。
 今月10日の協定発効後、台湾漁船の拿捕は2回目である。協定に対する強い疑問や不安が沖縄側にある中での相次ぐ違法操業は極めて遺憾だ。
 台湾側で協定が周知徹底されていないのでは、と疑わざるを得ない。沖縄側は今回の協定自体に納得していない。最低限の約束も守られないのなら、協議のやり直しを求めるほかない。
 拿捕現場は2回とも、協定で決めた合意水域から南に約150キロ離れた海域だ。台湾が自らの排他的経済水域ラインと主張する暫定執法線からも外れている。
 この海域は日本が設ける「拿捕境界ライン」の西側で、違法操業には従来は退去勧告で対処していた。協定発効を受け、水産庁はこの海域でも監視、取り締まりを強化する方針を示していたが、それに沿った対応となった。ルールを順守させるのは最低限の措置だ。今後も厳重に取り締まってほしい。
 現場海域はマグロ漁の最盛期を迎えている。あるいは台湾漁船は協定違反を知っていて、操業していた可能性もある。だとすればなおさら、協定違反には厳しく対処するという日本側の姿勢をより明確に示すことが重要だ。
 尖閣諸島を含む周辺海域の漁業権の取り決めを定めた今回の協定は、日台双方が操業可能な合意水域での漁船数や漁獲量など基本的なルールが決まらない中での「見切り発車」となった。
 ルールがないまま台湾漁船による操業の既成事実が積み重ねられると、日本側に不利な状況が常態化しかねない。そうならないためにも、早急に合意水域の操業ルールを確定する必要がある。
 しかし、合意水域外で違反操業が続くと、合意水域のルールができたとしても確証が持てない。合意水域外同様に周知徹底が図られずに、きちんと守られないのではないか。そんな思いが膨らむばかりだ。
 ルール作りでは、これ以上台湾側に譲歩することがあってはならない。日本政府は違反取り締まり同様に毅然(きぜん)とした態度で臨み、疑念や不安を解消すべきだ。