豪雨災害 危険回避へ機敏な備えを


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 沖縄本島地方は23日、激しい雨に見舞われた。那覇市では増水した安里川に女性が転落し約1・5キロ流された後救助されたものの、意識不明の重体という事故が起きてしまった。県防災危機管理課によると、24日時点で土砂崩れが5件確認され、各地で道路冠水、床下浸水、車両の水没なども相次いだ。

 豪雨災害はいつ人間に牙をむくか分からない。荒天時は必要以上に出歩かず、土砂崩れや河川の氾らんなど危険を察知したら即、安全な場所に避難する。自然への畏敬の念を忘れず、災害情報への機敏かつ冷静な対応も肝に銘じたい。
 気象庁は多数の人身被害を出した2011年の紀伊半島豪雨を教訓に、昨年から気象情報を改善した。従来は自治体に委ねていた避難呼び掛けまで踏み込んだ。重大な災害が予測される場合は一層の警戒を促して住民に危機感を伝えるなど、細やかに対応している。
 22日~23日に5回発表された沖縄地方気象情報のうち、23日夜の第4号と5号では防災事項を特記し「大雨により地盤が緩んでいる」として土砂崩れへの警戒を呼び掛けた。落雷、竜巻へ発達した積乱雲の近づく兆しがある場合には「建物内に移動」し、安全確保に努めるよう求めた。
 県民が自然の猛威を見せつけられた教訓がある。06年6月に梅雨前線の大雨で中城村北上原の村道が決壊。住民は避難を余儀なくされ、道路復旧まで2年半を要した。
 国の調査によると、北中城村から中城村、西原町に至る延長約8キロをはじめ各地に地滑り危険箇所が分布する。14日の梅雨入り後、那覇市で400ミリ以上の降水量を観測。大雨に見舞われた他の地域も地盤が緩んでいる可能性があり、2次災害への厳重な警戒が必要だ。
 災害を回避できるか否かは、災害関連情報の質と量、1人1人の危険を回避する判断力とにかかっている。これからの台風シーズンも油断は禁物だ。気象台の最新情報に加え、役所、消防などの防災情報も報道やインターネットでこまめにチェックし、災害に備える自覚が県民に求められよう。
 幼児やお年寄り、障がい者などの中には、自分の力だけでは自然災害に十分対処できない人もいるだろう。県民各自が自身の安全確保はもとより、家庭から1人の災害被害者を出さないよう災害の状況や情報に目配りしてほしい。