株価乱高下 実体経済の活性化こそ


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 東証の株価が乱高下している。23日には一気に1143円も急落した。24日も落ち着かない。「アベノミクス」とはやし、円安株高に沸いていた日本経済は冷水を浴びせかけられた格好だ。

 「アベノミクス」は「3本の矢」のうち金融緩和と財政出動を先行させてきたが、第三の矢に当たる成長戦略こそが鍵だ。政府は真に実効性ある政策を実行してもらいたい。
 「アベノミクス」は、円安株高を演出して企業業績を上向かせ、賃金上昇を通じて日本経済全体を押し上げるという方向性だった。だが株頼みの経済政策は危ういことを、今回の事態は知らしめた。
 23日の急落はヘッジファンドによる大量の売りが直接の原因だ。安倍政権発足以降、株価が一本調子で上昇したことへの警戒感が市場に充満していたところへ、中国の経済指標が予想より悪いと判明したことがきっかけとなった。
 このように、株価は実体経済とほとんど関係ない外的要因でいくらでも変動し得る。従って株価の乱高下に一喜一憂するのは合理的でないばかりか、政策の不安定化を招くので危険ですらあるのだ。
 大胆な金融緩和の限界も直視したい。日銀の当座預金残高は既に65兆円にも積み上がっている。日銀が市中銀行から国債を買っても、銀行から企業へ資金が流れないからだ。
 これでは不動産や株といった資産価格をつり上げるバブルが発生するだけだ。そしてバブルは間違いなく破裂し、不良債権が残されることになる。過去の経過を見れば、その後、経済全体が後処理に数十年も苦しむ可能性が高い。
 株高だけを囃(はや)すことの弊害も大きい。株価だけを考えると、リスクのある設備投資や技術開発投資を避け、内部留保をため込みがちだ。企業が長期的課題から目を背けることにもなりかねない。
 過度な内部留保重視の弊害もある。賃金への反映を抑制しかねないからだ。現に過去20年の日本経済がそうだった。結果は消費鈍化を招き、経済全体の収縮をもたらしたのである。
 真に実体経済を活性化させ、本質的な景気拡大をもたらす政策は、消費と設備投資への刺激である。政府は、小泉構造改革の労働法改定が非正規職の大量発生を生み、結果的に若者の消費支出抑制、ひいては景気悪化を招いたことの反省から、まずは出発すべきだ。