結核集団感染 知識、教訓を対策に生かせ


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 那覇市内の小学校で結核の集団感染が発生し、67人が感染して、うち6人が発病した。幸いにも発病した6人とも症状は治まり、発病していない感染者61人も服薬治療を続けており、通学含め日常生活を送っているという。感染拡大の恐れはないとみられている。

 今回の集団感染は、結核がいまだ克服されていない病であることを強く印象づけた。結核に対する正しい知識と教訓を社会全体で共有すべきだ。風邪症状が長引いているのなら早期に検査して感染を最小限に抑えるなど、対策に生かしたい。
 厚生労働省の調べでは、国内の新規の結核患者は2011年は2万2681人。死者は2162人で、インフルエンザで死亡する人の10倍。決して「過去の病」ではない。国内最大級の感染症で、世界三大感染症の一つでもある。
 県健康増進課によると、県内の12年の新規患者は304人で、死者は24人。この中には、妊婦が発病して亡くなるという痛ましい事例もあった。1993年以降、集団感染は県内で8例ある。決して侮ってはいけない病だ。
 結核は60歳以上の高齢者に比較的多く、子どもの感染、発病は少ない。このため大人以上に、微熱やせきなどの症状を風邪とみなして結核を疑わず、診断が遅れる事態が指摘されている。
 今回最初に発病した児童は昨年6月から症状が出ていたが、今年2月に肺炎で入院して結核であることが判明した。早い段階で結核と確定できなかったことが、感染拡大を招いたと推定される。
 那覇市保健所は「子どもの結核はまれで、診断は非常に難しい」と説明している。しかし今後は、教訓として生かすべきだろう。特に子どもは、これまで以上に結核も念頭に置いた診察・検査を強化するなど、全ての関係機関が連携して対策を講じてほしい。
 結核は発病する人の割合は感染者の10%にとどまる。恐ろしい病ではあるが、きちんと服薬すれば完治できることもきちんと認識すべきだ。
 その上で感染と重症化の予防に心掛けたい。子どもの場合はBCG接種が有効という。子どもも含め、免疫力が落ちた際に重症化しやすいため、普段から食事や生活習慣にも気を配ることも大切だ。
 行政や医療現場任せにせずに家庭や学校でも結核について話し合い、理解を深める機会にしたい。