南海トラフ地震 備えの発想を転換しよう

 政府の作業部会が南海トラフ巨大地震対策の最終報告をまとめた。マグニチュード(M)9級の巨大地震がいつ、どこで起きるのか、現状では「高い確度での予知は困難」と予知の難しさを認めた。

 事前の備えで被害を抑える「減災」対策が今後はより重要となろう。関係機関の連携、地域の取り組みが鍵を握るが、一方で報告は家庭や個人の防災対策を促す内容
ともなっている。いざという時に自分の身を守るのは自分だということを自覚し、防災教育の重要性を再認識したい。
 南海トラフ巨大地震は、東海沖から九州沖の太平洋海底に延びる溝状の地形(トラフ)を震源として起きる。最悪の場合、死者は32万人と想定される。政府の地震調査委員会は先週、東海、東南海、南海が連動するM8以上の地震が今後30年以内に起こる確率は60~70%と公表している。
 同地震では沖縄も1千億円の被害額が見込まれており、沖縄周辺の海溝型地震を引き起こす恐れがあるという専門家の警鐘もある。
 内閣府は本年度中に減災の数値目標を定めた事前防災戦略をまとめるが、最終報告には対策の工程表などは明記されていない。具体的な目標とそのために必要な諸施策の実行時期を明確にすべきだろう。関連する法整備も急がれる。
 巨大地震発生から1週間後の想定避難者は950万人に上る。報告では、自宅を失った人や高齢者、障がい者ら弱者を優先して避難所に受け入れ、被災が比較的軽い人に帰宅を促す「トリアージ」(選別)の検討も提言した。だが自治体からは「災害現場で実際に被災者を選別できるのか」と疑問の声もあり、十分な議論が求められる。
 被災地への支援に時間がかかるとして、国の防災基本計画で3日間を目安としている家庭の備蓄を1週間以上に拡大することも打ち出した。例えば水だと、大人は1日2~3リットルが必要とされるから、1週間分で2リットルのペットボトル10本程度の蓄えが要ることになる。水と食料を含めて全部新しく買って備えると1人当たり約2万5千円になるという。
 保管面や費用でもかなり大変なように思えるが、専門家は「レトルト食品や缶詰などを日頃多めに購入し、食べたら補充するといった、日常の延長で対応できる」とアドバイスする。普段の生活に非常時の備えを組み込む、という発想の転換が必要かもしれない。



関連するニュース







  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス



  • 会員制サービス






  • 他のサービス