小学英語教科化 母語を学び継承してこそ


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 政府の教育再生実行会議が、小学校で英語を正式教科にすることを安倍晋三首相に提言した。国際社会で通用する人材育成を推進、強化するのが狙いという。

 国際社会が緊密化する中で、世界で活躍する人材を育てることは確かに重要だ。国際語としての英語を習得する意義も理解できる。
 しかし、小学校から英語を本格的に教えることが本当に必要、適切なことなのか、ほかにやるべきことはないのか。疑問や課題も多い。
 小学校では既に2011年4月から、全国の小学5、6年で週1時間を基本とした「外国語活動」で英語に接している。これを正式な教科とした場合、英語を指導できる教員の確保が不可欠だ。
 担任などが英語の専門性を身に付けるのか、英語専門の教員を配置するのか。外国語指導助手(ALT)の活用を増やすのか。
 提言は、英語の教科化に加え、授業時間の増加と4年生以下にも教えることを提唱している。学校現場の負担増は想像に難くない。いずれにしても、人的整備と財政的裏付けが欠かせない。
 国語や算数などと同様に、児童の成績をテストなどで評価するのかも気になる。そうだとしたら逆に、小学生レベルで苦手意識を植え付けることにもなりかねない。
 日本の英語教育は中学、高校、大学で学んでも身に付かないと指摘されてきた。文法中心、受験優先の教育の弊害と言われる。その意味では中学、高校、大学でも英語教育を改革しなければ、小学校での英語教科化は実を結ぶまい。
 提言も、理科や数学などを英語で授業する指定高校の創設や、大学への外国人留学生増加などを求めている。むしろ、高校や大学などでのこうした改革が、小学校での英語教育より先ではないか。
 小学生には外国語ではなく、自国語をしっかりと学ばせるべきだとの見解も根強い。ましてや沖縄では、琉球諸語(しまくとぅば)を小学校の授業に導入すべきだとの意見も強まっている。消滅の危機にあるからこそなおさら、母語教育を重視すべきだという思いの表れだ。
 しまくとぅばと英語の双方を習得することが理想で、それは可能だ。だが、英語のグローバル化が少数言語を圧迫してきた側面も無視できない。母語を継承してこその国際化だろう。この機会に、沖縄の独自の議論があっていい。