アベノミクス 副作用に細かな目配りを


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 安倍政権の経済政策「アベノミクス」の副作用がじわじわと広がり家計を圧迫し始めている。

 全国の電力10社と都市ガス大手4社は、原燃料費調整制度(燃調)に基づく7月の電気・ガス料金をそろって値上げする。一斉値上げは4カ月連続。標準的な家庭では燃調制度が現行方式となった2009年5月以降の最高値を全社が更新する。
 アベノミクスの「第一の矢」とされる日銀の大規模な金融緩和などを受けた円安の進行で、原油や液化天然ガス(LNG)などの輸入価格が上昇したためだ。
 燃油価格の高騰は、漁業者ら水産業界や、タクシーやトラックなどの陸運業界にも大きな打撃を与えている。特に漁業者が深刻で、全国では出漁を断念したり廃業に追い込まれるケースも出ている。看過できない事態だ。
 アベノミクスは早期のデフレ脱却による日本経済の再生を目指すが、副作用をこのまま放置したままでは、目標達成など到底おぼつかない。政府は、影響を受ける弱者へのしわ寄せを最小化する対策を早急に講じるべきだ。
 円安の影響は原油高騰にとどまらない。輸入小麦や食用油などの価格も軒並み上昇しており、パンやパスタ、調味料など幅広い商品に値上げの動きが出ている。
 食品を中心とする生活必需品が値上げされる一方、金融緩和は長期金利の上昇を招き、住宅ローン金利も引き上げられる見通しだ。半面、企業は賃上げなどには慎重姿勢を崩しておらず、このままでは一般庶民は恩恵もないまま、負担感だけが増すことになる。
 アベノミクスは市場の好感を呼んだのは間違いない。昨年末からの円安株高の進行で、輸出関連企業を中心に企業の業績が改善し、個人消費にも改善の兆しが出ている。ただ、ここに来て、株価は乱高下するなど、先行きへの警戒感も強まっている。
 金融緩和、財政出動に続く「第三の矢」である成長戦略を軌道に乗せ、設備投資や雇用拡大など実体経済に反映させることが何よりも肝要だ。
 甘利明経済再生担当相は「アベノミクス効果は次第に浸透していく」と見通すが、副作用が強まれば、景気回復の動きにも水を差しかねないと留意すべきだ。太陽の光が強ければ強いほどその影は濃さを増す。影で苦しむ人々を切り捨てることはあってはならない。