大衆薬ネット販売 消費者の安全が最優先だ


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 一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売について、厚生労働省の検討会は高リスク薬(第1類=約100品目)の扱いをめぐり一部品目の販売制限と全面解禁で意見が対立したため、両論を併記して基本方針をまとめた。全面解禁先送りはやむを得ない。

 命や健康にかかわる薬のネット販売で消費者の安全確保策が未整備だからだ。そのまま全面解禁となれば、副作用や個人情報の流出といった2次被害も懸念される。
 大衆薬の販売は、ネット販売会社が起こした訴訟で最高裁が今年1月、第1、2類のネット販売を一律禁止する厚労省令を違法と判断。このため現行規制は効力を失い、事実上の解禁が進んでいる。
 検討会は、副作用リスクが比較的低い薬(第2類=約8300品目)の大半の解禁は認めた。ネット販売は、いまや政府の規制改革会議が求める全面解禁か、一部品目の販売禁止を残すかが焦点だ。
 第1類の販売について基本方針は、薬剤師が使用者の年齢や体重、アレルギーや妊娠の有無、併用薬、症状などを把握するため情報収集するべきだと指摘。検討会の議論では「十分な情報が得られない場合は販売差し控えや禁止が求められる」としてネット販売の一部規制を求める意見と、「目視や接触によらなくても使用者の情報収集は可能で、第1類の全てをネットで販売可能」との全面解禁派の意見が鋭く対立したという。
 対面販売の維持を求める日本薬剤師会など慎重派と、離島住民や高齢者などの利便性の観点から全面解禁を求めるIT業界など推進派の言い分はそれぞれ一理ある。ただ一歩間違うと国民の目に既得権益を守りたい勢力と、新たな利権獲得に走る勢力のせめぎ合いと映りかねない。優先すべきは消費者の権利であると銘記したい。
 薬剤師との対面販売と違い、消費者はネット販売でパソコンや電話を通じて病状など個人情報を伝えることにためらいもあろう。ネット解禁は、消費者のプライバシーの保護、副作用のリスクをきちんと確認し必要な薬を安心して購入できる環境整備が大前提だ。
 安倍政権は夏の参院選を見据え、ネット販売を成長戦略に盛り込む考え。丁寧に議論すべきネット販売の安全確保策を拙速にまとめるのは疑問だ。消費者の安全を第一に慎重かつ公正な議論を求めたい。