ヤフー参入 海運機能強化を急ぎたい


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 那覇空港の国際航空貨物拠点(ハブ)としての優位性がいよいよ鮮明になり始めた。

 米ヤフーの香港関連会社が全国各地の生鮮食品を出荷の翌日に香港の消費者に届ける通販事業を開始する。既に楽天も生鮮品の海外販売を1月に始めている。いずれも全日本空輸(ANA)による沖縄発着の国内外貨物便、ヤマト運輸による集出荷体制を活用したものだ。
 今後、アジアと沖縄の物流のパイプは太くなりこそすれ、細まることはないだろう。この優位性を最大限に生かし、多様な関連ビジネスがしっかりと沖縄に根付くようにしたい。
 ヤフーの事業は果物や肉、海産物を全国各地から深夜、沖縄に運び込み、通関を済ませて早朝に出発、夕方には香港の注文主に届ける仕組みだ。従来3~4日を要した輸送が1~2日でできるようになった。難しかった冷蔵品の取り扱いも可能になる。ヤマト運輸も那覇を拠点とした国際クール宅急便を年内に始める。政府の成長戦略である農水産品の輸出倍増計画もにわかに現実味を帯び始めた。
 これを県経済に生かすには単なる貨物の通過に終わらせず、梱包(こんぽう)をし直すといったことで付加価値を沖縄に落とすことが必要だ。
 その付加価値を最大にするには船との結び付きが鍵を握る。最も低廉な輸送方法である海運で大量に運び込み、小分けしパッケージングをして空輸で新鮮なままに運ぶことで、高級品に生まれ変わらせることができるからだ。
 そのためには那覇港の貨物航路の増加とともに、インフラ整備で接岸や荷揚げといった機能を充実させることが重要になる。海運の航路も港のインフラ整備も「鶏が先か、卵が先か」という議論になりがちだが、航空貨物の増加は有力な論拠となろう。航空貨物ハブの進展を機に機能拡充を進めたい。
 パッケージングなどには印刷など関連産業の立地も必要だから、バックヤードの確保も重要になる。部品の集積拠点、故障品の修理拠点とする構想もあるからなおさらだ。
 今の那覇空港周辺は明らかに手狭で、那覇軍港返還はその意味でも急務だ。この機を逃せばアジアの他の空港に機能を代替されかねず、返還まで手をこまぬくのも無策にすぎる。広大な空間を占有する空陸自衛隊の那覇基地の縮小も有力な選択肢として検討すべきだ。