特殊出生率上昇 一喜一憂せず抜本対策を


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 国内の急激な少子化の流れは変わっていない。統計の数字に一喜一憂することなく、政府は、夫婦が子どもを産み育てやすい社会環境を整えるとともに、人口減少社会を見据えた抜本的な対策を急ぐべきだ。

 女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率が2012年は1・41となり、前年から0・2ポイント上昇した。厚生労働省の人口動態統計(概数)で、1・40を上回ったのは1996年以来16年ぶりだ。
 一方、赤ちゃんの出生数は103万7101人と前年に比べ1万3705人減少し、過去最少を更新した。主な出産世代である20~30代の女性人口の減少が背景にある。出生率の上昇は喜ばしいが、日本の人口減少と高齢化は着実に進んでいる。
 働きながらの出産や育児への公的支援を手厚くするのと同時に、労働力の確保や持続可能な社会保障制度の構築など、近未来社会を展望した本格的な対策が急務だ。
 合計特殊出生率を都道府県別にみると、沖縄が1・90で最も高く島根1・68、宮崎1・67と続く。出生数が死亡数を上回った人口の自然増は神奈川、愛知、滋賀、沖縄の4県だけだった。
 だからといって沖縄が安泰なわけではない。人口維持に必要とされる水準は2・07で、県人口もいずれ自然減に転じる。予測では県人口は25年にピークの144万人を迎えるが、消費や雇用の中心となる15~64歳の生産年齢人口は、2年後の15年に減少に転じるとされ、悠長には構えられない。
 そうした意味では、県は13年度に県人口増加計画を策定するが、時宜を得た取り組みだ。子育て支援やUターン奨励、過疎対策など幅広い分野で網羅的に諸施策を講じ、現在140万人の人口を150万人に増やす計画だ。沖縄の実情に即した、実効性のあるきめ細かな施策を期待したい。
 人口が過密化する沖縄本島中南部の都市部では、待機児童の急増が直面する課題であり、過疎化が進む離島などの農村地域では、仕事や医療、教育など定住条件の整備が不可欠となる。都市部と農村部ではおのずと支援策も異なることに留意する必要があろう。
 人口は、国や地域の活力に直結する「元気の源」だ。夫婦や家族、地域社会の在り方をあらためて考えることから始めたい。