維新訓練移転案 県外移設こそ国民議論を


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 日本維新の会の橋下徹共同代表が安倍晋三首相に対し、米海兵隊MV22オスプレイの訓練の一部を大阪府の八尾空港で受け入れる構想を伝えた。沖縄の負担軽減というより、「慰安婦」に対する自身の暴言への批判をかわす小手先の案に見える。沖縄を政治利用するつもりなら、やめてもらいたい。

 橋下氏が代表を務める地域政党の大阪維新の会は先月、政党そうぞうと米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設推進の政策協定を締結した。会見で「県外移設は辺野古と同じくらい実現不可能ではないか」と述べた。本音は普天間代替基地を県内に押し込めたいだけではないか。
 橋下氏は大阪府知事時代に「米軍基地は沖縄だけに負担させる問題ではないとの認識を持ちたい」と述べ、普天間の県外移設に積極的な姿勢を見せていた。米軍機訓練の関西空港への移転受け入れも表明した。しかし、どれもうやむやになっている。これはどういうことか。
 状況に応じて発言を変遷させる橋下氏の言葉には、重みがみじんも感じられない。在日米軍の風俗業活用発言についても6日午前には「沖縄の皆さんに誤解を与えたなら申し訳ない」と陳謝していたが、夜になると「沖縄県民を侮辱したわけではないので、筋が違う」と正反対のことを言い出す。朝令暮改以外の何物でもない。
 橋下発言について県議会が抗議決議を可決した。「筆舌に尽くしがたい苦しみと痛み、人権じゅうりんを強いられている県民の感情を逆なでする発言で断じて許しがたい」と、県民への謝罪を求めたのは当然だ。
 風俗活用発言について、橋下氏は「『性犯罪を抑えるために本気になってください』と伝えるため」と述べ、沖縄での犯罪抑止が理由だったと自己正当化した。八尾空港利用についても沖縄の負担軽減が目的だという。沖縄に寄り添っているかのように見えるが、これは明らかに理不尽だ。なぜ、沖縄への基地固定化が前提なのか。
 オスプレイ配備撤回の東京行動で県民代表が政府に渡した建白書にある「普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念する」との沖縄側の要求はまるで考慮していない。橋下氏は、全機移駐もしくは普天間飛行場の県外・国外移設こそ提案し、国民的議論を促すのが筋だ。八尾移転案は大いに疑問だ。