米中首脳会談 アジアの平和安定の礎に


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 外交・安全保障でアジア重視戦略を取るオバマ米大統領と中国の習近平国家主席が2日間にわたって会談した。国際社会に大きな影響力をもつ両国の首脳が「新たな形」の戦略的協力関係を強化し、北朝鮮の非核化を目指すことなどで一致した。米中新時代の到来を印象付けたと見ていいだろう。

 中国からのサイバー攻撃問題や海洋権益の膨張政策による周辺国との摩擦をめぐり、米中両国の緊張が高まる中、両首脳は率直に意見を交わした。
 国同士の平和的共存には、見解の相違を乗り越えた、相互理解、相互尊重の理念が欠かせない。サイバー攻撃や人権問題などの立場の違いを踏まえつつ、米中の首脳が平和共存を図る姿勢を打ち出したことをまず評価したい。
 中国の国家主席が就任からわずか3カ月で訪米したのは初めてだ。米西海岸の保養地で、2首脳は胸襟を開き、対話を重ねた。
 米国とソ連の2大国の対立は、第2次世界大戦後の世界秩序に深刻な影を落とした。新たな米中関係は、米ソ対立の負の遺産を再現してはならない。信頼醸成を続け、両首脳はアジアの平和安定の礎になる決意を強くしてもらいたい。
 尖閣諸島や南シナ海の領有権問題をめぐり、習主席は「国家主権と領土の統一を断固として守る」と強調した一方、「関係各国が挑発をやめ、対話を通じて解決する路線に戻ることを望む」と述べた。日本などをけん制した発言だ。
 これに対し、オバマ氏は、あくまで話し合いによる緊張緩和を求めた。両首脳の応酬は、尖閣をめぐる日中の軍事的衝突を回避したいという意思の表れだろう。
 領有権をめぐる習主席の発言は、尖閣諸島で領海侵犯を繰り返す中国自らの振る舞いを自制することにもつなげるべきだ。
 2月に訪米した安倍晋三首相とオバマ大統領との会談は2時間余だったが、米国は今回、習主席を破格の厚遇で迎え、会談は約8時間に及んだ。
 米軍基地問題をめぐり、日本政府は沖縄の民意などお構いなしに米国の施策を受け入れてきた。主権国家の影が薄い日本は、軽く扱われているのではないか。
 中国の軍事的脅威を強調し、「日米同盟」の強化一本やりでやってきた日本の外交姿勢には危うさがある。米中関係の変化を見据え、日本も中国との戦略的互恵関係を再構築していかねばならない。