米軍性犯罪 自浄能力は期待できない


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 在日米陸軍トップのマイケル・ハリソン司令官(少将)が、日本国内で起きた性的暴行事件に関する適切な捜査や報告を怠り、司令官としての監督責任に背いた疑いがあるとして停職処分となった。事件は昨年起きたというが、発生場所や被害者に民間人や日本人がいるのかなど、陸軍は詳細を明らかにしていない。

 在日米陸軍は神奈川県のキャンプ座間に司令部を置くが、沖縄にもトリイ通信施設など4施設に約1600人が駐留している。米兵犯罪は軍隊の中だけで起きているわけではない。
日本政府は今回を含めて米軍の性犯罪の実態について米側に具体的な説明を求めるべきであり、沖縄県も必要な行動を起こすべきだ。
 部隊内の性犯罪に関する捜査・報告の不手際を理由に司令官が停職になるのは極めて異例という。綱紀粛正をアピールする狙いもありそうだが、身内の犯罪に対する甘さを指摘され続けてきた米軍も、相次ぐ性犯罪を無視できなくなっているということだろう。
 女性兵士らに対する米軍の性犯罪は米国内で深刻な問題となっている。国防総省によると、昨年9月までの1年間(2012会計年度)で米兵が関与した性的暴行の報告数は前年度比6%増の3374件。報告は氷山の一角とみられ、同省は12会計年度の性犯罪被害者を2万6千人と推定している。
 米政府は事態を深刻に受け止めており、オバマ大統領は5月に「根絶のためできる限りのことをする」と約束した。だが大統領の強い決意表明の前後には、あろうことか空軍や陸軍で性犯罪防止担当者の性的暴行事件が相次いだ。
 2月には軍法会議で性犯罪に問われ、禁錮1年の判決を受けた空軍中佐を上官が不問に付した事例も発覚した。米議会は現在、米軍性犯罪に関する捜査や起訴の権限を、被害者の上官から外部に移すための法案を審議しているが、これに米軍は「指揮官に対する信頼が失われ、秩序と規律が弱体化する」と抵抗している。世論の強い批判を受けてもなお組織の論理を前面に押し出すその姿に、軍隊に潜む構造的な暴力性を垣間見る思いがする。
 繰り返される米兵犯罪に、沖縄住民は人権を蹂躙(じゅうりん)され続けている。重大な関心を持って米国内の議論を注視したいが、問題と向き合うその姿勢を見る限り、米軍の自浄能力は期待できない。