ロタウイルス 拡大防止へ教訓生かそう


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 ロタウイルスの感染による急性胃腸炎が石垣市で集団発生し、0~6歳の乳幼児ら182人の発症が確認された。大規模なロタウイルスの集団感染は県内で初めてだが、離島県の沖縄では小児の感染症が集団発生しやすいという専門家の指摘もある。感染の拡大防止へ家庭や地域で連携を深めたい。

 症状が発生したのは5月1日~31日ごろ。急性脳炎を発症した3歳児と4歳児を含む20人が入院したが、全員快方に向かっているという。ひとまず終息に向かっているようだが、油断はできない。感染経路は究明されておらず、手洗いの励行など予防対策の徹底が求められる。
 ロタウイルスは5歳までに誰もが一度は感染し、感染すると免疫ができると言われる。免疫のない乳幼児に急性胃腸炎が多く、国内では毎年2~5月を中心に流行する。生後6カ月~2歳の発症が多いが、今年は4月に茨城県の小学校でロタウイルスなどによる胃腸炎が集団発生。5月に千葉県で発生した高校生の集団食中毒でも、ロタウイルスが検出されている。
 感染すると米のとぎ汁のような白く水っぽい下痢や嘔吐(おうと)、発熱などの症状が現れる。多くは1週間程度で回復するが、重症化するとけいれんや脳炎・脳症などの合併症が引き起こされ、死亡することもある。水分を補給して脱水症状を防ぐことが大事だという。
 今回は感染が市内の約半数の保育施設に拡大したことに、関係者は衝撃を受けたという。感染を1人に抑えることができた施設もあれば、次々と感染が広がっていった施設もあったようだ。
 感染した乳幼児たちの保護者は、仕事などでどうしても子供を預けざるを得ないことが多い世代が中心だろう。状況などがよく分からないうちに、あっという間に感染が広がったのかもしれない。今後は早い段階から保育施設と保護者、医療機関や行政などが広く認識を共有し、連携・協力する必要があろう。経験を次に生かしたい。
 ロタウイルス胃腸炎の予防を目的としたワクチンは、2年前に日本で初めて承認され、任意での接種が始まっているが、約3万円の自己負担がかかる。公費負担を求める声も強く、県内では金武町が今年4月から接種費用の75%を助成している。世界保健機関(WHO)も接種を推奨しており、公費負担の議論を深めるべきだろう。