統一球 潔く責任を取るべきだ


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 ずるい「隠し球」だ。
 プロ野球を統括する日本野球機構(NPB)が、公式戦で使う統一球を、昨季までより飛ぶ球に変えていた。その事実を選手やファンに説明せずに、こっそりメーカー側に仕様変更を求めていた。

 統一球は、飛距離を抑えることなどを目的に2011年から導入した。今季は開幕から昨年までと比べて明らかに本塁打が増えていた。7~8割の選手が「球が変わった」と感じていたが、NPBは2カ月以上否定し続けてきた。選手会の追及でようやく事実を認めた。
 昨年までの検査で反発係数が基準よりも低い球が目立ったため、製造しているミズノ社に昨夏に修正を指示し、今季開幕から新球を使用していたという。
 本来なら不合格になる「飛ばないボール」が公式戦で使われていたわけで、この事実を公表しなかったことも問題だ。
 NPBはミズノ社に対しても「全く変わっていない」と答えるように指示していたというから、悪質な隠蔽(いんぺい)体質と言われても仕方ない。
 球の飛距離は投手の防御率、打者の本塁打などに直結し、年俸を左右する。選手会の弁護士が指摘するように「労働条件の変更」であり、選手や球団に報告義務があるのは当然だろう。公表すればプレーのやり方も変えられたはずだ。
 統一球を取り入れたきっかけはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にあった。飛ばず、滑りやすいとされる米大リーグ使用球に苦慮する日本代表の姿を憂えた加藤良三コミッショナーが、同質の球の導入を推進した。球にはコミッショナーのサインがプリントされている。
 加藤コミッショナーは導入後に「飛ばなくなったボールを変更する気はないか」と問われるたびに「朝令暮改はしない」と答えていた。並々ならぬ意欲で導入しながら反発力の調整について知らなかったとは不思議な話だ。トップが知らなかったとしたら、組織の体をなしていない。
 NPBは選手だけでなく12球団とファンに対する信頼を裏切った。選手会関係者は「統一球の問題だけではない。一事が万事、過程を明らかにしない体質が問題だ」と指摘している。
 加藤氏は説明責任を果たし、NPBの隠蔽体質を一掃するために、潔く責任を取るべきだ。