イラン大統領選 国際協調路線を着実に


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 イラン大統領選は、保守穏健派で改革派の支持を受けた聖職者、ロウハニ最高安全保障委員会元事務局長が保守強硬派の複数の候補を予想外の大差で破り、当選した。

 ロウハニ師は早速、核兵器開発疑惑で欧米と対立し、経済制裁を招いたアハマディネジャド政権の強硬路線との決別を宣言、「協調と自由な対話」を基軸とする新たな外交指針を表明した。国際協調路線への転換を評価したい。
 ただ、イランの最高指導者ハメネイ師の出方によっては、新政権の改革が保守強硬派の抵抗に遭う可能性も残る。ロウハニ師は、強硬派を味方に付けるぐらいの粘り腰で改革を具体化してほしい。
 ロウハニ師は、欧米との核協議を念頭に「対話を求める国々はイラン国民を尊重しイランの権利を認めるべきだ」と主張、平和的な核開発などイランの要求にも応じるようけん制した。
 核不拡散の観点から、この主張を国際社会が許容するか疑問だ。そもそもイランの核開発問題は、アハマディネジャド政権が2005年の発足以来「原子力の平和利用」を大義名分に核開発で強硬路線を突き進んだことが発端だ。
 国連安保理が核濃縮活動の停止を求める決議をするなど、核開発禁止で圧力をかけ、制裁を拡充しても、イランは耳を貸さなかった。
 ロウハニ師の国際協調姿勢が本物であるなら、欧米をけん制するのではなく、信頼関係の再構築こそ優先すべきだ。一方で、欧米各国が穏健派の新大統領に対し最初から無理難題を要求し、政権基盤を弱体化させては元も子もない。
 欧米とイランのそれぞれに歩み寄る謙虚な姿勢が求められよう。
 地域大国イランは今後、中東和平で重要な鍵を握るだろう。イランと国際社会とのあつれきは「イスラエルの抹消」を唱えたアハマディネジャド政権の強硬姿勢が一因とも言われる。イスラエルとの関係改善には、米国の協力も不可欠だ。対米および対イスラエル外交で新大統領の手腕を注視したい。
 イランはシリア内戦でこれまでアサド政権を支援してきた。国際社会は今日、政権、反体制派の双方に武器が供給され、シリア内戦が泥沼化することを警戒している。ロウハニ師には内戦の外交的解決に向けた対応でも、国際社会の注目が集まろう。内政、外交両面で良識ある対応を期待したい。